02
10時前に鳳有高校に来て見れば、まだ誰もいない。なぜか閉鎖されている高校が開いていて、グラウンドの奥の方に球技大会などで使われる大きなテントがぽつんと立っていた。グラウンドの真ん中を境目にぽつぽつと腰くらいまでの雪の盾のようなものが立ててあった。なんだかよく分からない。あれも雪白が立てたのか、何なのかは分からない。
俺は、何をするわけでもなく校門前で手持ち無沙汰にざくざくと雪を踏んでキョロキョロしていると、駅の方へ繋がっている道に二人の少女の姿が見えた。
一人はすぐ分かった。特徴的なアホ毛とここからでも聞こえる少し大きい声。ここのところ交流がある少女――……澤北秋穂。その隣にいるのは、秋穂より一回り小さく可愛いが辛辣(しんらつ)の椎名菫だろうか。ショートボブの髪型を見てそれを確信する。
先に俺に気づいたのは、秋穂だった。
「坂城さーん!」
ぶんぶんと元気よく手を振る秋穂に犬の耳と尻尾が見えたのは気のせいじゃない。嬉しそうに駆け寄ってくる姿は、本当に犬みたいだ。
俺の前まで来た秋穂に、ふざけて「……お手」と手を出して見ると、「わん!」と言って本当にやった。
ノリが良い奴だ。
「あきほーいきなり走るんじゃねー」
「あ、菫ごめーんー」
マイペースに雪道を歩いて来た椎名は、寒いのかマフラーに顔を半分埋めている。雪白のメールには動きやすい服装と書いてあったのに、少女は青葉の制服にPコートと手袋だった。
秋穂はスポーツブランドの上下にダウンジャケットそれにネックウォーマーと手袋。本当に動きやすそうだ。俺は、普通の私服にダウンジャケット。ジャージは学校指定のしか持ってないのでさすがに止めた。
話は変わるが、椎名は俺のことを嫌っているようで、俺もあまり良い印象は持っていない。だからと言って挨拶しなわけにはいかない。
「久しぶりだな……椎名」
「おはようございます坂城さん。去年はお世話に(なってもなくないけど)なりました。今年もよろしく(したくないけど)お願いします」
「()はなんだ()は!!」
「は? なんですかカッコって?」
いけしゃあしゃあと……。()がなければ新年の挨拶よしては、深々とした礼も付けて100点満点だった。秋穂は菫の挨拶で俺に挨拶してないことに気付いた。
「こっ今年も、よろすっ〜〜〜!」
そして、慌てて挨拶しようとして、舌を噛んだ。アホ。
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