坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




  06



「おいしー!」
「ホント?」
「うんっ!」


ホットケーキは少し焼き焦げていたが即興の手作りとしては十分以上。祐は自分で焼いたホットケーキを美味しそうに頬張っている。俺は秋穂と洗い物をしながら、そんな祐を見て顔が緩むのを感じた。子供は嫌いでも、誰かが喜ぶのを見るのはこっちも嬉しくなる。


秋穂も顔を綻ばせ「うちもこれ洗ったら食べよ〜」と嬉しそうに言う。


しかし、意外だったのは秋穂の手際の良さだった。俺が材料を探し出すと、手早く計量し祐に作り方を教えながら、生地を作った。携帯で検索したホットケーキの作り方だったが、ほとんど秋穂は作り方は見ていなかった。慣れている、と確かに感じた。お菓子を作っている秋穂は楽しそうで、祐も一生懸命一緒に作っていた。


正直、俺はほとんど見ていただけだ。


「お前って凄かったんだな……」
「はい?」


主語も何もないまま、思ったことが口を出てしまった。


「あ、いや……俺は料理は出来ないものだから……あとお前がテキパキ動いてたから、それもちょっと驚いた」
「ヘマをしないうちは新鮮ってことですか……」
「……まあ、そうだな……」
「肯定されると地味に傷つきます……!」


むくれる秋穂に、すまん、と笑いながら謝り洗い物を終えた。


「意外だったんだ。お前が子どもの面倒ちゃんと見るし、ちゃんとしたホットケーキ作るし、なんか見直した」
「……見直したってことは期待してなかったんだ」
「え、いや、そういうわけでは……」



フォローの言葉が自爆に変わる。



期待してなかった、という言葉は……その通りで。上手く取り直す言葉が見つからない。


そこで祐が「せーきにーちゃん、あきほおねえちゃん食べないのー?」と俺たちを呼ぶ。秋穂が、今行くー、と返事をしたが俺を見て何かに気が付き、俺の顔に手を伸ばした。


「っ?」
「泡、ついてますよ?」


秋穂に洗い物をしながらついたであろう口の端についていた泡を指で取られ、呆けた。


――……身長差から上目遣いに見られ、視線がかち合い……むくれていた少女が、俺が、見たこともない優しげな顔で俺を見たから。


その表情に見惚れてしまった。


「さかじょーさーん? ホットケーキ冷めちゃいますよ?」
「え、ああ……」


秋穂は、泡を取ったのに動かない俺を不思議そうに見ていた。


「どうかしました?」
「い、いや……なんでもない……」
「?」


そう言葉を濁しながら、首を振った。


……秋穂に見惚れたなんてどうかしている。


(今日はアイツの意外な一面を見たから……!)


頭ではさっきの秋穂が繰返し思い出される。

心臓はバクバク早まる。

胸の中は言い訳を重ねる言葉が連なる。




俺は、しばらく経っても、秋穂を見ることが出来なかった。













ホットケーキ
(ホットケーキでほっと一息!)
(零点……)
((……なんか坂城さん怒ってる!?))
 
 









おまけ
祐「ママー!きょうね、せーきにーちゃんのしりあいのおねえちゃんがホットケーキ作ってくれたの!」
祐母「良かったね〜……ってしりあいのおねえちゃん?」
坂母「……ほぅ……」
坂「た、祐!!」←秋穂のこと親にバレたらヤバイと今気づいた。
坂母「正紀ぃ……貴様が家に入れるほど親しい女の子が居たとは母は知らなかったなあ?」
坂「い、いや、祐の面倒を俺一人では荷が重くて……!」アタフタ
祐「おねえちゃん優しかったけどおむねなかったー」
坂「祐ッ! 仮にも半日面倒見て貰ってそんなこと言うな!! 見た目など……!//」
祐「せーきにーちゃんはずかしいの?」
祐母「まあまあまあ……!」タノシー
坂母「どこのお嬢さんか吐け。家に上がらせたのならば、付き合っているのだろう? どこまで進んだ? 手ぐらいは繋いだのだろうな? お前が付き合うくらいなら頭は良いか? 祐がばかと言っていたがどのくらいだ?  可愛いか? 胸は無いらしいが……いや、容姿や頭よりも性格だな。まあいい。いますぐ母に紹介をせよ!」
坂「アイツはそんなんじゃないッッ!!」
坂姉「ちょっと! 正紀に彼女が出来たって!?」シュバッ
坂「姉さんまで出てくるな!!」
坂母「今日は赤飯だな……よし、父さんに連絡だ!」
坂姉「あいあいさー! 祝いじゃ祝い!」
坂「赤飯など炊かなくていい! 父さんにも連絡するな!! アイツは彼女なんかじゃないって言ってるだろ母さんと姉さんの阿呆!!」
坂母「あー琴子かぁ? 正紀のことなんだがな……反抗期だ!! こんな母に怒鳴る奴じゃなかった!! あと、正紀に彼女が出来たらしく……」
坂「琴子さんに電話もするなああああ!!」


――……そうして母と姉に秋穂のことを根掘り葉掘り聞かれた坂城だった。


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