04
「もーいーくつ寝るとー」「寝正月ー」
「だらしないぞ!?」
祐は秋穂という新しい遊び相手が出来て嬉しそうだ。道路側に俺、祐、秋穂という並び順で祐と手を繋ぎ、歩いている。
三人でこうやって歩くのは結構恥ずかしいのだが……秋穂が気にした様子はない。行き先は俺の家。外で遊んでも良いのだが、いかせん、寒い。祐に風邪を引かせてはいけない。ちら、と秋穂を見る。
(……秋穂も女子だ。親もいない俺の家に上げて良いものか……いや、何もしない。何もする気もない。秋穂だってあっさり気にもせず、了承した。しかし、世間体から見てだな……!)
そんなことを葛藤していると、祐から斜め横の質問が飛んできた。
「ばかのおねえちゃんはせーきおにいちゃんの友達?恋人?彼女?」
「ばかのおねえちゃんじゃな……って、え?」
「ぶっ……! さっき知り合いと言っただろう!」
変な葛藤をしていたせいかつい、焦って声を荒げてしまう。祐と秋穂はそんな俺を不思議そうに見た。自分の意思とは関係無く、顔に熱が集まる。
そして、祐の爆弾発言。
「せーきにいちゃんはばかのおねえちゃんがすきなの?」
「「ぶっ!?」」
これには二人して吹き出した。すぐに否定しようとしたが、「好きじゃない」と言うと秋穂に失礼になる。異性として「好き」ではない。だが、「好きじゃない」というと秋穂の好意もすべて否定しまうようで、口をぱくぱくさせるしかなかった。否定したのは顔を真っ赤にさせた秋穂で、ぶんぶんと頭を振っていた。
「そそそ、そんなわけない!! 坂城さんがうちを!? ななななな……ない!! ないからああああ!!」
「そ、そんなに否定しなくても良いぞ……」
「だ、だっ……!」
秋穂は何か言おうとしたが、俺の顔を見て捨てられた子犬のように眉を下に下げた。
(……なんだその顔)
何か言いたげな……切なそうな顔。
でも、そんな顔を見せたのは一瞬で「た、タスクくんはお菓子すきっ?」と話題をすり替えていた。
「すき!ケーキもすきだよ!」
「うちも好きなんだー。美味しい!」
「あまくてすき!」
二人はお菓子やケーキの話で盛り上がり始めたが――……俺は、さっきの秋穂の表情が気になって二人の会話に入れなかった。
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