坂城くんと秋穂ちゃん | ナノ




  03



「おっそくなりましたー!」


秋穂は、2時前の電車に乗って鳩羽に来た。すぐに駅のベンチにいた俺を見つけて嬉しそうに小走りで来ようとして……滑って転んだ。


「ふべっ!」


――……それは、予想を裏切らない良い転びっぷりだった。フィギュアスケートの審査員も見事と言って10点をつけただろう。その転びっぷりに。


……そんなことを思う前に助けよう、俺。もう自力で立ち上がっているけども。秋穂が居るところまで行き「大丈夫か?」と声をかける。祐が俺の半歩後ろで俺の服の袖をつかみながら、不思議そうに秋穂を見つめている。


「ったー……大丈夫です……なれてます」


慣れてる、というコメントもどうかと思うが……大丈夫なら良いか。


「このおねえちゃんばか?」


俺が妙な納得したとき、祐が俺の服の袖をぐいっと引っ張って言った。秋穂も、それで祐に気づいたようだ。同時に初対面で幼児から自分が馬鹿呼ばわりされたことも、半秒遅れて気づく。


「誰が馬鹿じゃ! 馬鹿だけど!」
「初対面の子どもから馬鹿と言われるお前を尊敬する」
「それほどでも……ってうち目一杯馬鹿にされてるじゃん!!」
「おねえちゃんおもしろーい!」


祐は、何が面白いのか笑い出す。秋穂は「何も面白いこと言ってないんだけど……」と首を傾げる。


「っていうか、このショタっ子がタスクくん?」
「ぼくごとうたすくだよー。ばかのおねえちゃん」
「ばかのおねえちゃん!? そんな風に呼ばないでー! おねえちゃんの名前は澤北秋穂って言う名前なんだぜ?」
「ばかのおねえちゃんなんだぜ?」
「違うってーの!」


俺は、さっそく祐と気安く喋る秋穂を、さすが、と舌を巻かずにはいられなかった。まだ会って一分もしないうちに、祐と会話が成り立っている(?)


やはり、精神年齢が同じくらいだからか……と少女に対して本当に失礼なことを考え始めた。


祐は秋穂を「ばかのおねえちゃん」と認定したらしい。ばかのおねえちゃんばかのおねえちゃんと嬉々としてきゃっきゃっと呼んでいる。


「ばかばか言うなー! あきほ! うちの名前は秋穂!」
「あきほーお腹空いた」
「え、おねえちゃんもう無し!? タスクくん意外と俺様!?」


……むしろ5歳時に舐められている秋穂だった。



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