05
気持ちも落ち着き、今の状況を思い出した。ここはどこだと、自分のいる部屋を見渡す。
「……、」
……なぜだろうか。物凄く見覚えがある部屋だ。
「秋穂……ここは……」
「なんだ。目ぇ覚めてんじゃねえかよ」
瞬きを何度かし、秋穂にここはどこだと聞こうとしたとき……奥のふすまが開いて、その先には、腐れ縁・朝義一流(あさぎいちる)が立っていた。
「やっぱりか……」
思わずため息をついてしまう。幼少時、幾度ととなく訪れたことがある朝義家の居間だ。そこに布団を敷いて俺は横になっていたらしい。
……ということは、俺は朝義に助けられた……?
「俺見てため息つくんじゃねえよ、バカ城」
疑問の目で朝義を見ていたが、朝義は俺が自分を見てため息をついたことにムカついたらしく、俺を睨む。朝義はなぜなのか知らないが、髪は濡れていて頭にタオルをかぶっていた。風呂上がりには見えないが、細身の身体にシャツが少し張りついて身体のラインが見えている。それと片手には薬局の袋。何してたんだコイツ。
秋穂はそんな朝義を見て「え、エロォ……」とボソッと呟いたが、ハッと俺を見て顔を真っ赤にし、慌て始めた。
「え、えっと! い、いい……今のは言葉のあやとか咄嗟に出た言葉でッ!!」
「何を慌てているんだ?」
「い、いえ……女子として今の発言はアウトだったかなあ……と……うぅ……」
「大丈夫だ。お前のボーイズラブ関係発言は完全に色々アウトだ」
「うぁ……確かに……」
ズーン、と秋穂は落ち込み、情緒不安定な奴だな……と思っていると朝義から薬局の袋を投げられた。
「うぉ!?」
「元気ならそれ持って帰れ。布団はそのままで良い。ちゃんと秋穂送ってけよアホが」
「え、おい! 朝義ッ!?」
朝義は、そう言ってさっさっと奥に下がってしまう。薬局の袋の中には、風邪薬や胃薬、●ポディにカ□リーメイトや□カリ等……。薬や病人が口にするようなものが入ってあった。
秋穂も袋をのぞきこみ顔をほころばせ、話し出す。
「坂城さんが倒れてたとき、一流さんに助けを求めたんです」
「な、なんでだ……?」
「気が動転してて、電話帳の一番上にあった人に電話したら一流さんで……"朝義"って五十音順で一番じゃないですか。どうにか事情説明したら、来てくれて……本当助かりました」
「アイツが……」
意外というか、俺だと分かったら「ほっとけ」とか言いそうなのに……。
「色々文句言ってましたけど、雨の中買い物までして来てくれて……一流さんってすげぇ良い人……(一流さんぐっじょっぶ過ぎるこれは完全なるフラグ萌えはげるっつーの!)」
「心の声がダダ漏れだ都合良く解釈するな阿呆おおおお!!」
「いぃぃぃい!? ちょ、坂城さん、本気チョップは止めて!! 痛い痛い痛い! 痛いです!!」
「黙れ! 俺のなんかちょっと感動した気持ちを返せ!!」
……秋穂と居るとシリアスだった空気がすべて壊される……。
散々ぎゃあぎゃあ言ってたら朝義に「うっせんだよ! 今何時だと思ってんだ!? 元気になったんならさっさっと帰れ死ぬかバカ城!!」と常識的に(死ぬか発言は置いておき)キレられ、家を追い出された。
prev|
next
しおりを挟む