03
「坂城さん……っ!」
「あき、ほ……?」
現実に引き戻された俺。駅前のベンチで倒れたハズなのに今は、どこかの暖房が効いた温かい部屋にいる。
なぜか隣には秋穂が居て、目が覚めた俺にひどく安心していた。
「大丈夫ですか……?」
「……っ!」
秋穂に顔を窺うように言われ、俺は驚いた。
自分の頬に伝った生ぬるい雫に。
「……すま、ない……っ」
とめどなく溢れるそれは、頬を伝って枕とシーツを濡らした。秋穂に泣き顔を見られたくなくて、左腕で顔を隠す。
なんなんだ。もう、みっともない……。
溢れて止まらない涙を止める術が分からない。止まれ、止まれ止まれ……! そう念じて焦るほど、涙は止めどなく溢れて頬を伝う。
まるで、抑えていたものが溢れ出て止まらないように。
すると、俺以外の涙が布団に透明なシミを作った。――……秋穂がポロポロと涙を流していた。涙を手で拭きながら嗚咽を抑えて、「大丈夫、ですよ……っ」と言葉を紡ぐ。
「なんで、おま、えも泣く……っ」
そう聞けば、さかじょ、うさんが、泣くから……と嗚咽混じりに言われ、どうしようもなく胸が締め付けられた。
「お前が、泣いてどう、する……っ
あほうが……!」
いつも笑っている少女に涙は似合わなく、俺は泣きながら悪態をつくしかなかった。
prev|
next
しおりを挟む