06


今日の夕飯はカレーとリクエストされ、スーパーに買い物に来た小虎と千百合。


「高坂、歩きづらい……」
「そう?」


だが、千百合は小虎の腕に自分の腕を絡め、ぴったりとくっついて離れない。正直、邪魔に感じていた。


「新婚夫婦みたいでしょう」
「付き合いを吹っ飛ばすな!」


小虎は、初めて千百合と居るのに「居心地の悪さ」を感じていた。胸がざわついて落ち着かない。なんだか、会話もちぐはぐで、いつものようにテンポ良く会話を続けられない。
二人は簡単に買い物を終え……その間も、彼女が周りに見せつけるような行動をされ彼は精神的に疲れ切っていた。
だから、だろうか。彼が帰り道で「たい焼き屋」を見つけ、買い求めてしまったのは。


「ほい」
「ありがとう。嬉しい」


ベンチで二人並んでたい焼きを食べる。もちろん、千百合は小虎にべったりとくっついている。
通り過ぎる人それぞれ、気まずげに目をそらす人、殺意のこもった目を向ける人……その視線に胃が痛くなり、「帰ったら、ショウにあげよう……」とそっと膝の上にたい焼きを置いた。


「美味しい。屋台のたい焼きで尻尾まで入っているなんて、嬉しい」


のんびり千百合はぱくり、とたい焼きにかぶりつきそう感想を言う。
――瞬間、小虎は違和感を覚え疑問を口にしていた。


「……高坂って、屋台でたい焼き食ったことあるのか?」
「え?」
「お前……花見も花火も見に行ったことないから屋台で何か買ったことない、って言ってたじゃねえか……その口ぶりだと、食べたことあるみたいだけど……」
「え、ええ……この間、お兄ちゃんが買ってきてくれたの」


誤魔化すようなくちぶりに、疑心が高まる。


「……万里さんが買ってくるならもっと高級な物だろ。さっき……屋台で、って言った」
「言い間違えたみたい。ねえ、さっきから山月くん怖いわ」
「…ごめん。言い過ぎたな」


小虎はあまり追及するとこっちが悪いように見えると考えなおし、ため息をついて謝る。
そして、小虎から千百合の頬にあんこがついているのが見え、何となしにそっと拭った。


「ああ…ありがとう」


当たり前のように言われ、小虎は目を見開き千百合の肩を掴んで無理やり自分のほうに向かせた。


「あ…や、山月くん?」
「……誰だよ……」


小虎は、千百合を睨みつけ低い声で問う。
乱暴な動作をしたせいで、千百合の手にあった、たい焼きが地面に滑り落ちる。


「な、なに?い、いたい…いたい!山月くん……」
「誰だって言ってるんだ……高坂はそんな反応しない。
俺から行動したら……そんな態度でいない――表情はないけど……慌てて、照れるんだ」



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bkm
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