05

――三桜学園・二年八組


「俺もう死ぬかもしれない……マンション帰りたくない……」
「ぎゃはっ!でも、ご飯は作らなきゃいけないでしょー?」
「おれー今日、カレーがいい!」


小虎は泣き言を言いながら、自分の机にうっつぷしていた。その隣で笑うのはスズとショウだ。


「高坂のやつ…朝からなんなんだよ!!?妙にくっついてくるし、なんか変だ!そのせいで鷹野がいきりたつし……もうやだ実家帰る……」
「小姑にいじめられるお嫁さんみたいなこと言わないでよぉ」


――小虎は朝、千百合が妙にくっついているのを鷹野唯に見られ「山月くーん……それは私へのあてつけかなー…?」とばっちり目をつけられていた。
このまま夕飯の買い物に行ってマンションで唯に会ったら、物理的に苛立ちをぶつけられるに違いない。マンションに帰ると待ってるのは、小姑じゃない……魔王だ。


「山月くん、いつ誰と結婚したのかしら?」
「こ、高坂…!」


そこへ、またいつの間に姿を現したのか千百合が後ろに居た。


「くすくす……お嫁さんは私でしょう?」
「だ・か・ら!朝から冗談キツイぞ、お前!」


小虎は眉間にシワを寄せる。千百合は無表情でけろっとして「お夕飯の買い物に行くんでしょう?早くいきましょう」と小虎の腕を引く。


「あ、待て……スズ、ショウ、またマンションで!!」


千百合に引っ張られて小虎は教室から出て行った。残されたスズは怪訝な顔をし、疑問を口にする。


「変だよ……高坂ちゃんって、いっつも小虎が教室から出てくるまで外で待ってるのに。それに……押せ押せだけど、あんなに強引でもない」


気のせい、と片付けるのは簡単だったがスズは一度疑問に思ったら、千百合の行動全部が怪しく見えた。
ショウは口を尖らせながら「だって今日のこーさか、ほたてがいだもん」と持論を言う。
スズは首を捻りながら「ほたてがいねえ……むしろ、キツネが憑いたみたいだ……」と廊下に消えた小虎を心配に思い、つぶやいた。





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