02

「お前、よくこれだけ準備できるよな……」
「そうか? 米はといで朝スイッチいれて、魚は焼くだけだし、お浸しは昨日のものだし、味噌汁もネギとわかめで簡単に……そこまですごいことじゃないぜ?」
「嫌味かってくらい簡単に答えるなよ」
「嫌味って…」
「いや、なんでもない。いただきます」


世間にはここまでしっかりとした男子はいない、と思いながらランニングで空いた腹を朝ごはんで満たしていく。
その目先は自然と、台所に立つ小虎に向けられる。


「……妻が台所に立つ姿を見る夫って、こんな気持ちか……」
「沙弥ちゃん、誰が誰の妻なの?」
「う、うわあ!?ち、千百合ちゃん……!?」


思わず呟いた独り言に反応したのは、いつの間に隣に座っていたのか……しっかりと学校へ行く準備をし終えた千百合だった。
小虎は沙弥の悲鳴を聞き、振り返った。そこに千百合が居ることに驚く。


「高坂?」
「おはよう、マイダーリン」
「ぶほっ!?」


まさか、朝からいきなり変なことを言われるとは思わず、噴きだした。沙弥も味噌汁を吹き出しかけ、なんとか抑えた。


「あ、朝から元気だね、千百合ちゃん」
「山月くんが居ればいつも元気よ」
「あ、朝から変なこと言うな!!高坂!」


さらっと歯の浮くよなことを言い、小虎は顔を真っ赤にして怒鳴る。


「くすくす……山月くん、可愛い」
「男に可愛いっていうな!」
「な、なんか…いつもより積極的じゃない?千百合ちゃん?」
「そう?」


沙弥はけげんな顔をして、千百合を見る。ただ、どこも変わったところはない。発言がいつもより過激な気がしたのは……気のせいかと、首をひねる。




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bkm
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