14
「気持ち良かったなあ……教室じゃ女王様のアイツがわたしに泣いてすがって懇願すんの。……助けてってわたしだって何遍叫んだのに、助けて貰えなかったのに」
苦々しく言う愛子に指摘する。
「……でも、あんまりいい気分してないだろ?」
「うん……初めは、スッキリしたよ。でも、現状は何も変わらなかったし、今は罪悪感でいっぱい……やっぱ、やり返したいって思ってもやり返したら終わりだな。だって、わたしはこいつ等と同じレベルに落ちたんだ」
結局、復讐なんて自己満足で満たされることはないんだ。一時はスッキリはするかもしれない……でも、後味が悪くて心がドロドロして気持ち悪い。押し留めた俺だってそう思うんだから、愛子の心は相当鬱々としたものだろう。
気まずい沈黙が流れる。帰ろう、と言おうとしたとき、「すーちゃん!あーちゃん!」と後ろから呼ぶ声がした。
「は!? 静子!!?」「お姉ちゃんっ?」
俺と同じ小豆ジャージを着た静子が駆け寄ってくる。なんで、お前が……。
「はぁ……はぁ……」
「静子、夜の散歩はするなって……」
息を切らして俺たちの前に姿を現した静子は、息を整えながら言う。
「あーちゃんが、心配だったんだもん……」
「……お姉ちゃんっ」
愛子は釘バットを地面に落とし、姉に抱き着く。
「私……警察に捕まっちゃうかも……っ」
「大丈夫だよ……あーちゃんは未成年だから罪には問われない」
それは、俺たちがよく知っている。……静子を襲った奴らは、未遂と暴力を奮っただけでは、罪に問われなかった。未成年だったことが特に、強い。
「あーちゃん、帰ろ? お母さんに叱られちゃう」
「うん……っ」
抱き合う二人は綺麗で……美しきかな姉妹愛……なんて終わるはずもなかった。
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