釘バットボーイと、驚喜を手に入れた俺。 | ナノ

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「気持ち良かったなあ……教室じゃ女王様のアイツがわたしに泣いてすがって懇願すんの。……助けてってわたしだって何遍叫んだのに、助けて貰えなかったのに」


苦々しく言う愛子に指摘する。


「……でも、あんまりいい気分してないだろ?」
「うん……初めは、スッキリしたよ。でも、現状は何も変わらなかったし、今は罪悪感でいっぱい……やっぱ、やり返したいって思ってもやり返したら終わりだな。だって、わたしはこいつ等と同じレベルに落ちたんだ」


結局、復讐なんて自己満足で満たされることはないんだ。一時はスッキリはするかもしれない……でも、後味が悪くて心がドロドロして気持ち悪い。押し留めた俺だってそう思うんだから、愛子の心は相当鬱々としたものだろう。


気まずい沈黙が流れる。帰ろう、と言おうとしたとき、「すーちゃん!あーちゃん!」と後ろから呼ぶ声がした。


「は!? 静子!!?」「お姉ちゃんっ?」


俺と同じ小豆ジャージを着た静子が駆け寄ってくる。なんで、お前が……。


「はぁ……はぁ……」
「静子、夜の散歩はするなって……」


息を切らして俺たちの前に姿を現した静子は、息を整えながら言う。


「あーちゃんが、心配だったんだもん……」
「……お姉ちゃんっ」


愛子は釘バットを地面に落とし、姉に抱き着く。


「私……警察に捕まっちゃうかも……っ」
「大丈夫だよ……あーちゃんは未成年だから罪には問われない」


それは、俺たちがよく知っている。……静子を襲った奴らは、未遂と暴力を奮っただけでは、罪に問われなかった。未成年だったことが特に、強い。


「あーちゃん、帰ろ? お母さんに叱られちゃう」
「うん……っ」


抱き合う二人は綺麗で……美しきかな姉妹愛……なんて終わるはずもなかった。


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