釘バットボーイと、驚喜を手に入れた俺。 | ナノ

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「もし、この四人に復讐するなら俺だ。でも、俺はしていない。平凡と静子を愛するチキン男子高校生だからな」
「マジうぜぇ」
「……うん、カッコつけたごめん」

女子中学生に謝っている時点でヘタレだ俺……シャーロックホームズみたいにカッコ良く謎解きなんてできねーわ。


「げふん……あの事件を知っていて憎しみを抱くやつは、静子とおばさんかおじさん…………初めは静子かと思った。静子だってアイツらを恨んでいる。復讐出来るなら、復讐している――でも、静子は出来ない。あんな白アスパラガスが釘バット奮えたらびっくりだ」


釘バットを持つぐらい静子は出来る。でも、不良たちの背後に回って思いっきり釘バットを奮うなんて出来ない。



「じゃあ、誰が? ここからは、推測だ。――姉の乱暴を知らない妹。でも何らかの拍子に知ってしまった。姉があんな風になったのは、アイツらのせいだ。姉が大好きな妹は釘バットを持って復讐を決意する――」
「そんなベタな小説売ってたら絶対買わないわ」
「ううん……推測当たってないか?」
「……そんな綺麗な話じゃない」



レインコート下の顔が歪む。



「そうだな――復讐でもなんでも、人を傷つけたなら、綺麗な話じゃない。最初、少年だって思ってお前だとは思わなかったんだよ。でも、静子が全部教えてくれた」
「……お姉ちゃんが?」
「ああ……髪、切っただろ? なんか暗示的で……そのあと自分と俺が、中三のとき釘バットを拾ったなんて言うんだ。……そんな話、俺は覚えてない。……でも、本当は愛子が拾ったんだって言いたかったんじゃないか? 愛子が髪を切って釘バットを拾って、何かしているって……」


パサ、と愛子がレインコートのフードを頭から取る音がする。ロングからベリーショートになった髪型。


「お姉ちゃんはすごいけど、すーくんも中々やるな……」
「うるせぇシスコン」
「ウザいよ変態」
「……」



前科のせいでグサッと来た。何も言い返せねえ。



「……お姉ちゃんは全部、分かってたんだ?」
「わかんね。静子は変人だからな……ただ、夜の散歩してたりするから、お前が家を出ていく姿を見たんじゃないか」
「すーくんは、わたしを止めに来たわけ?」
「……最初はそのつもりだった、でも――無理、だったわ」



頭から血を流した惨めな南西を見たら、あの時の憎しみが蘇って殺したくなった。



静子をあんな風にした奴等を、百篇呪った。教室で西東を見るたび、心のなかで釘バットを奮いなぶり殺した。包帯でぐるぐる巻きになった西東を心で嘲笑った。



今、気を失っている南西に「死ね」って思った。





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