11
和泉はすべてを吐き出して胸のつっかえが取れたように、ほっとした。
あのホストのお陰か――と思い苦笑する。
頼りなさそうなのに、やっぱり大人で――人に頭を撫でられるなんて何年ぶりだろう、と和泉は思う。頭を優しく撫でた手は酷く安心した。心地よくってくすぐったい。間延びした口調はチャラい雰囲気だったが、妙に安心出来た。もらった名刺は大事に鍵のかかる机の引き出しに入れた。たぶん、電話をかけることはないだろうけど……かけてみたい気持ちもあった。
今日、知り合ったばかりなのに。
あの甘ったるい匂いは別の女のものか。だったら嫌だなあ…と和泉は考えてハッとする。
「……ベット入ってからアイツのことばっか……」
急に恥ずかしくなって布団を被る。ドクドク鳴る心臓がうるさかった。
和泉は耳を塞ぎ、芽生えた感情に狼狽する。
――少女は時が経つにつれて知っていく。この感情の名前を、意味を――。
今はまだ、知らないままで――夜は更けていった。
END
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