エクリュと輪舞曲を


エピローグ  






会場全体に響き渡る歓声と拍手の中、私は目の前の現実にただただ涙を流していた。都さんと江ちゃんも抱き合って喜んでいる。

私達の視線の先にある電光掲示板には『1 Rin Matsuoka』の文字が誇らしげに輝いていた。







『……今まで応援してくれた皆様と、コーチをはじめとするチーム関係者、そしていつも支えてくれた家族と仲間に感謝を』

レース後のインタビュー。
少し興奮気味ながらもしっかりと答えている凛に感心していると、モニター越しに目が合った様な気がして、思わず頬に熱が集まってくる。それをなんとか誤魔化そうとしたけれど、江ちゃんにはバレてしまったようで、とびきりの笑顔をこちらに向けられた。うぅ、恥ずかしい……。みんなには秘密にしてもらおう、なんて考えていると、視線の先にいる凛がニヤリと特徴的な笑みを浮かべていた。

『そして……』

 何かを言いかけた凛がそこで一旦言葉を止める。そして、インタビューブースから少し振り返ると、今度はモニター越しではなく本当に視線が合わさった。

『そして、最後にずっと俺を支えてくれた大切な人に伝えたいことがあります。今までどんな時も俺を支えてくれてありがとう。これからも一緒に居て欲しい。……結婚してください』

衝撃的な発言に、静まり返る会場。
その瞬間、涙で滲む中に見えた凛の笑顔だけが私の世界の全てになった。

この夏はもうすぐ終わってしまうけれど、二人の新しい季節はまたここから始まる。
暑い夏はこれから先、何度でも繰り返す。
その度にこうやって、一緒に泣いて笑って過ごすのだろう。

この先もずっと……貴方と共に


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