『おれ、松岡凛って言うんだ!凛って名前だけど男だからな!』
『はじめまして、凛くん。私は苗字名前って言うの』
『あ、凛でいいよ。俺も名前って呼ぶ!』
『うん、じゃあそうするね。これからもよろしく、凛』
『おう!よろしくな、名前!』
▽
「夢……」
随分と懐かしい夢を見た。まだ私が小学生の頃に知り合った、一人の少年との出会いの場面。私の弟のような幼馴染みと同級生の、快活でロマンチストで、ちょっぴり泣き虫な赤髪の彼はいまもシドニーで自分の夢に向かって邁進しているのだろう。連絡が取れなくなって暫く経つけれど、頼りがないのは元気な証と思うことにしていた。
「うん、いい天気」
カーテンと窓を開けると春の柔らかい日差しと穏やかな風が全身を包み込む。今日の講義は午後からだけれど、折角気持ちよく目覚めることが出来たのだ。どうせなら部屋の掃除でもしてみようかな。なんだか今日は良いことがありそうだ。
そんな事を考えながら、朝食を作るためにキッチンへと向かった。
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