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01 楽しみはそぞろ読みゆく書(ふみ)のうちに我とひとしき人を見しとき〈橘曙覧〉
(私の楽しみは、気ままに読んでいく書物の中に、自分と同じ理想を持つ人を見いだしたときだ。)


02 つれづれと空ぞ見らるる思ふ人天降りこんものならなくに〈早良親王〉浅霧 遥様
(ぼんやりと空を見てしまう。心に思う人が、天から降りてくるものでもないのに。)


03 散ればこそいとど桜はめでたけれうき世になにか久しかるべき〈在原業平〉白梟様
(桜は惜しまれて散るからこそいっそうすばらしいのだ。このつらい世の中に、何が長く変わらずにあるだろうか。何もあるはずはないのだ。)


04 かれ果てむのちをば知らで夏草の深くもひとの思ほゆるかな〈凡河内躬恒〉A星様
(離れてしまう将来のことなど考えないで、今は深くあの人が恋い慕われるよ。)


05 忘れじのゆくすゑまではかたければ今日をかぎりのいのちともがな〈儀同三司母〉
(忘れまいという誓いが将来までは期待できないので、今日を限りとして死んでしまいたいものだ。)


06 あらざらむこの世のほかの思ひ出にいま一度の会ふこともがな〈早良親王〉
(もうまもなくあの世に行って居なくなるこの世の思い出として、いま一度あなたに逢うことができたらよいのになあ。)


07 賢しみともの言ふよりは酒飲みて酔ひ泣きするし優りたるらし〈大伴旅人〉綾瀬様
(自分を賢いとしてえらそうにものを言うよりは酒を飲んで酔い泣きする方がかえってまさっているらしいよ。)


08 色見えでうつろふものは世の中の人の心の花にぞありける〈小野小町〉
(色に見えないで変わっていくものは世の中の人の心という花であったよ。)


09 鳰鳥の葛飾早稲の新しぼりくみつつ居れば月傾きぬ〈加茂真淵〉
(葛飾の早稲で醸造した新酒を杯について飲んでいるうちに、月は西に傾いてしまった。)


10 ありとても頼むべきかは世の中を知らするものは朝顔の花〈早良親王〉まくも様
(今、生きているからといって当てになるであろうか。いや、何の当てにもならない。そのような無常の世の中を思い知らせるものは朝顔の花なのである。)




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