はるか遠い記憶、忍だった頃の記憶が蘇る。
生臭い血の匂いを毎日嗅いでは、鉄と鉄が打つかり合う音が響き渡る戦場の記憶だ。
いつの時代も争いが絶えることはなく忍の歴史は血で血を洗ってきた。仲間は次々に命を落としていった。
人間同士の戦いなど非合理的・非生産的だ。だが忍は上の命令には従わなければならない。
人柱力である私は非力ながらも再生能力に長けており生きながらえていたが、とうとう順番が回ってきたのか戦いに負け命を落とした。
これで仲間の所にいけるのか。視界は既に霞んで見えなく安らかな気持ちのまま私は忍の世を去った。

脳裏に赤い彼岸花が咲き誇る景色が過ぎった。



目を覚ますと私は赤子になっており、知らない森で横たわっていた。
赤子が森で生存する確率など皆無である。死んだはずの人間が赤子になっているなんて、最初はなにかの幻術にかかっているのかと信じられなかったが、直ぐに現実と向き合わなければならなくなった。前世と言うべきか、忍としての記憶が蘇らなかったら間違いなく一日も持たずに死んでいた。
いや、体内に封印された尾獣が死なせてはくれないだろう。
前世では忌み嫌っていたナメクジの尾獣は今世では良き相棒だ。
人柱力だからと親に敬遠にされ、仲間に利用された原因であるこいつを一方的に嫌っていたが、なんだかんだこいつは優しい。前世では非力な私に尾獣の力を貸してくれたし、今は赤ん坊の私を気遣ってくれてるのかこいつのチャクラで体を守ってくれているおかげで飲まず食わずとも生きていくことができた。


この時代には人喰いの鬼がいる。
森の中で遭遇した化け物は、自身を鬼だと名乗り半ば理性もないのか私を稀血と呼び、食おうと襲ってきた。
歩けなかった頃に比べたら、今は忍術で応戦することができるようになったが、
幼女の体では体力もなく刃物も握れない、術も数回しか出せない状況で、一撃でも喰らったら即死と圧倒的不利な状況は変わらない。
水遁・水化の術で湖に逃げ込んだり、水遁・泡沫で身を隠したりで手一杯だ。
しかも鬼はダメージを与えても再生する。腕がもげようが足が千切れようが再生し回復する。
体が成熟して体術および他の忍術が使えるようになれば戦い方も広がるだろうが、今は犀犬の酸で鬼の体全てを溶かし尽くすしか勝つ術がない。
鬼に襲われる日々に辟易していたし、遭遇する鬼はどんどん強くなる。
鬼の中には忍術ではなく血気術?なんてとんでもない力を使う奴にも遭遇した。
この世には鬼しかいないのか、幼少期からこんなハードモードなんて....なんとクソな世だ…!!!



森の中でのバトルロワイヤルが8年経過した頃に、私は黄色い鱗模様の着物を着た老人と出会う。
今世で生まれて初めてあった人間は、鬼の首を斬り血肉ごと滅した。

「爺さん、なんだその刀は?鬼を滅することができるのか?」
「(その歳で鬼を退治するとは此奴は才能があるかもしれん)儂についてこい」

別の鬼を酸で溶かした私に老人は驚愕していたが、子供である私に警戒する様子もなく自身の家に招いてくれた。
そこで鬼のこと、鬼を退治する鬼狩りのこと、稀血とは何かを教えてもらった。
鬼は日光に当たると肉体が消滅するらしく、故に退治するには鬼殺隊という鬼狩りが持つ日輪刀で首を切らないといけないらしい。稀血である私は鬼に狙われやすいので、鬼を倒すことができる唯一の武器である日輪刀を入手し、万が一に備えるのは合理的だろう。世話になった爺さんから刀を奪うのは気が引けたので、鬼狩りに接触し日輪刀を入手することが私の目的となった。

爺さんは直ぐに私を鬼狩りのところに行かせてはくれなかった。
剣の師範らしい爺さんは護身術といいながら私に雷の呼吸や剣の型について教えてくれた。だが生憎と忍びである私には剣がどうにも合わず正直やる気がなかったのだが、悲しそうな爺さんの背中を見てられずに仕方なく剣の修行をすることにした。
爺さんの稽古に付き合わされ、肉体作りから剣術・技について学んでいたら気づいたら2年が経過していた。
呼吸および六つの型を不完全であるが習得した頃に、爺さんが真剣な顔で「藤襲山に行け」と言った。


藤の花が咲き乱れて、異様な気配がする不気味な山だった。
階段を上った先にある広場には何人もの刀を帯刀した子供が集まっていた。
おそらく私が最年少だろうが、ここに私より強い気配を持つものはいない。


「皆様、今宵は鬼殺隊最終選別にお集まりくださって、ありがとうございます。」
「この藤襲山には鬼殺の剣士様が生け捕りにした鬼が閉じ込められており外に出る事は出来ません。」
「山の麓から中腹にかけて鬼共が嫌う藤の花が一年中狂い咲いているからです。」
「しかし、ここから先には藤の花は咲いていないので鬼が出ます」
「この中で7日間生き抜く、これが最終選別の合格条件でございます。」

「「ではいってらっしゃいませ。」」

薄気味悪い瓜二つの少女らが宣言した。
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