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ちゃぷんと音を立てて湯船に入れば、ふぅとため息をついついてしまう。この身体になっても風呂はやっぱり気持ちのいいもので、毎日のように入れる現状にありがたさを感じる。

時刻は23時過ぎ。玉狛支部は自宅に帰る人、泊まる人、住んでいる人、もうみんな自室に戻りそのまま寝る時間だ。明日は朝から用事がある人が多く、みんなすでに消灯しているだろう。おれもいつもならこの時間には風呂を済まし、眠れない時間を戦闘の復習や、今日あったことを思い出しながら時間を使っているところだが、こなみ先輩が「今日は彩里、防衛任務のあと帰ってきて泊まるって言ってたわよ」なんて言ってたのを聞いて、先に食べてしまったため、せめてコイビトがご飯食べる時に一緒に食卓にいようと待っていたので遅くなってしまった。

22時半を過ぎた頃、やけに遅いなと実力は心配してないが、帰りの遅さに少しモヤモヤし始めたところ、迅さんが帰ってきた。おれを見るやいなや、ニヤリとした迅さんは
「23時になっても帰ってこなかったら風呂行けよ、湯船の近くにタオルを置いておくことをおすすめする」
そのあと誰もこない最後の風呂だからのんびりしなよ。なんて言うもんだから、よくわからなかったけど迅さんの言うことに意味が無いってことはないだろうから(オサムもそんなようなことを言っていた)今はこうして湯船に浸かっているのである。

(それにしても遅いな…)

アヤリの今日のシフトは21時で終わりだと言っていた。さすがに遅いと心配になる。お湯に口まで潜りぶくぶくと泡をだし遊びながら、迅さんの言葉通りのんびりすることとした。


しばらくすると、ガラッと風呂の扉の開く音がした。迅さんの話だとおれが最後の風呂になるはずだったけど、と音の主を確認する。そこにいたのは、心配でたまらなかったコイビトのアヤリがタオルで身体を隠し固まっていた。おれは湯船の近くに置いていたタオルをすぐに腰に巻いて湯船を勢いよく出てアヤリの方に向かった。

「ご、ごめんね!出直すね!」
「まぁまぁ」
「いや、ほんと、私、一回戻るから」
「まぁまぁ」
「タオル引っ張らないで!」
「いいだろ?」

身体なら何回も見たことあるじゃんか、と告げれば元々赤めの顔をさらに赤くして、俺から目を逸らして、それとこれはまた違うよって小さく呟く。この表情にはたしかなまんぞくを感じる。

「なにもしないぞ?」
「ほんとに?」
「うむ」
「…。行くからタオル離して」

私が今遊真くんのSE使いたいくらいだよと呟きながら浴室に向かう彼女の後を追った。なんだかんだ2人でお風呂に入るのは初めてだ。


洗っている間はこっち見ないでと言われて、おれはアヤリに背を向けて湯船に浸かる。身体を流す音が止んで、ぺたぺたと歩く音のあとに、ちゃぷんとお湯が揺れるのがわかった。

「こっち向いていいよ」

声の方を振り向けば、しっかり湯船の端で、がっちりタオルを身体に巻き付けているアヤリが、ほっこりとした表情で湯船に入っていた。

「タオルは湯船に入れてはいけない…ってオサムが言ってたぞ」
「いや、ほんと、恥ずかしいので許してほしいよ」
「ふむ…」
遊真くんにタオル付けてもらってるのは私のわがままだから、見逃してね、なんて慌てながら言うもんだから、まぁ今晩はこのあと誰も来ないだろうし、タオルは残念ではあるけども一緒に風呂に入れることを喜ぼうと思った。

「今日は帰り遅かったな。なんかあったのか?」
「んー、思ったより敵の数が多かったの」
「そっか。おつかれさん」
「うん、ありがとう」
「メシは?」
「置いてあったの食べたよ」
「そっか、よかった」

色々話しながら湯船を楽しむけれど、だいぶアヤリの顔が赤くなってきていた。そろそろ逆上せてしまうかもしれない。本人も疲れもあってか普段はあまり寝付きの良くないけども少しうとうとしてきているのがわかる。

「アヤリ」

名前を呼んで、両手を広げれば、少し固まったが思ったより早く近くに寄ってきた。向き合っていたのを、くるりと回転させて背中をおれにもたれさせる。おれの方が身長が小さいため、さっきよりもアヤリが湯船に深く浸かってしまうのがもうしわけない。

肩に顔を置いて、ぎゅっと力を込める。タオル越しにアヤリの身体の形がわかって、ドキッとなるけれど、今日のアヤリは疲れていて、寝付けそうなので邪魔をしてはいけない。おれと違って寝れるときはなるべく寝かせてあげたいなんて人に思うようになったのはいつからだろう。

「今日はアヤリの部屋で寝るまで一緒にいるからな。あがるぞ」

ぱっと両手を離して先に湯船から出る。ほら、なんもしなかっただろ?なんて声をかければ、アヤリもハッとして、別に疑ってないよ!なんて言いながらざぶんと湯船から出て、ぺたぺたと追いかけてきた。

今日は少しでも早く、頑張って帰ってきたコイビトが眠れるといい。脱衣場では、「着替えてる間、絶対こっち来ないでよ!見ないでよ!」って元気な声で言われたので、やっぱり眠るには時間がかかるかもしれない。