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※フォロワーの夢CPを思わせる表現があるため、閲覧注意




目の前でお肉の焼けるいい匂い。初めてここに連れてこられた日に比べてお腹は減るし、食べれるようになったし、自分でもだいぶ食事に関して前向きになれた。むしろおいしいものはなるべく食べていたいと思う。
今夜行くぞと突然声を掛けられ、訓練が終わればすぐにこの、いつもの焼肉屋に連れてこられた。今日も二宮さんに。二宮さんが焼肉に連れて行ってくれる日はなにか話があるときだから、きっといなくなった鳩原さんのことだろうか。突然の誘いだったので、私から二宮さんに出す話題が特になく「最近どうですか?」くらいしかない。もちろん、そんな質問に二宮さんが会話を広げてくれるはずもなく、トングはずっと二宮さんの手の中なので、私がやれることは淡々と焼かれ、私のお皿に乗せられていく牛さんたちを口の中に入れていくことだけだった。強いて言うなら、二宮さんの飲みものが無くなればジンジャエールを先に頼もうと思ったけども、私が気付く前に二宮さんが自分で注文しているため、本当にやることが食べることしかない。
再び飲みきったジンジャエールを二宮さんが注文し直し始めた。お前もなにか飲むかと言われたので私はウーロン茶をお願いしますとだけ答えた。すぐにジンジャエールとウーロン茶が届いて、目の前に出された飲みものを見ると喉が乾いていなくても飲んでしまう。たっぷり入ったグラスを持って飲み始めたら、二宮さんの口が開いた。
「お前は空閑が好きなのか」
「げほっ!ごほっっっ」
突然の彼から似合わな過ぎる質問に、私はウーロン茶にむせてしまい、必死に胸を叩いて咳を治める。二宮さんは何をしているんだお前はと言っているが、貴方こそ何を言い出しているのだろうか。
「なんでそんなこと聞くんですか」
「お前あいつのことお気に入りだろ」
「答えになってませんよ……」
飲みものを飲むとまたむせそうだったので、いまだにせっせとお皿に乗せられていく牛さんを食べる。
「二宮さんはどうなんですか」
「どうもなにもお前には関係ないだろ」
「じゃあ私のことだって二宮さんに関係ないのでは?」
「それとこれとは別だ」
それにお前は知っているだろ、とジンジャエールを口にふくむ二宮さん。確かに私は多くは知らないけれども、浅くは知っている、ボーダー隊員の中でも数少ない方なのかもしれない。
「どうなんだ」
「どうもなにも、正直わかりませんよ……」
「自分のことだろ」
「自分のことなのにわからないから困っているんです」
じゃあ二宮さんはどうだったんですか?って尋ねれば、ぴくりと眉を動かし、再びジンジャエールに口を付け始めた。二宮さんはそういう時だけは分かりやすいと思う。二宮さんをじっと見つめれば、ため息をついて、グラスを机の上に置いた。
「自覚したくなかった」
「え?」
「俺は答えたからな」
「えぇ……」
聞き返しても言い直してはくれないらしい。再びお肉を焼き始めてこちらを見ようとはしない。今度は私がウーロン茶を飲む。
「そんなこと話すために今日呼んだんですか?」
「悪いか」
「いや、悪くないです。ちょっと意外でした」
「まぁ、お前も早く自分と向き合うことだな」
「あまりしたくないですね……」
お前のそれは短所の一つだと言われてしまう。私はそれこそ自覚があったので反論出来ずにいたけれど、代わりに「直したらいい事あります?」と尋ねれば、「思ったより悪くない」
そう答える二宮さんは、少しだけ、いつもより柔らかい表情をしているように見えた。