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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「遊真くんはさ、元々その眼の色なの?」
「そうだけど」
なんで?と問えば、綺麗な赤色だなってずっと思ってたのと答えるアヤリ。今日は支部から本部のアヤリの部屋まで送って行く日で、歩けなくもない本部までの距離を二人で歩く。この時間が好きだ。最初の頃は目を合わせずに、無言で歩いてたこの道も、今となっては星が好きなアヤリが立ち止まっては空を見上げ、満足するとごめんねって言いながら歩くを繰り返す。アヤリが楽しそうに歩いてくれるのがとても嬉しい。何度も空を見上げては隣に立って一緒に見上げる。他の人ならば早く帰ろうと思うのかもしれないが、アヤリが星を眺めている時の表情が好きで、さらにおれには夜の時間はたっぷりある、アヤリを早く送って寝かせないといけないって気持ちはもちろんあるが、基本的におれにはメリットしかない。
「突然目の色のことなんてどうしたんだ?」
「あぁ、さっきの話しね」
今も空を見上げて立ち止まっていたアヤリの横顔に疑問を投げかける。
「今日はさ、雲がないから星が綺麗に見えるでしょ?」
「うん?」
「あそこに赤く光って見える星があるのわかるかな」
「うん」
「あの星見てたら、遊真くんの目みたいだなって」
「なるほど」
ふむ、とうなづきながら上を見る、確かに空には赤い星が浮かんでいる。よく見ると赤色だけど、上の方が影っているのか、少し暗く見える気がして「あの星はアヤリの方が近いのでは?」と呟いた。本人はそれを聞いて「嬉しいけど、私はあんな綺麗な赤じゃないよ」なんて眉を下げて答えた。
アヤリの目の色だって赤色だ。おれのとは違う、深めの色をしている。おれたちはコイビトだから他の人よりも近くで目を見る機会があるから気がつけることだけど、アヤリの目はおれの白髪をくっきり映してくれる、そんな色がおれはとてもお気に入りだ。
「星って、すごい昔に光ってるんだって。手の届かないところにあるのに、こんなに綺麗だなって思わせてくれるの。不思議で好き」
「ふーん。じゃあおれは星じゃないな」
「え? なんで?」
どうもピンとこなかったようで、疑問を顔に浮かべているアヤリ。遊真くんが星でないなら…。白い悪魔…? なんてよくわからない方向に考えが向かっているようだ。そういえば白い悪魔って誰が言い出したんだろうか。
「全然わかんないよ」
「ふむ。それは残念」
「教えてくれないの?」
「おしえてほしいのか?」
「え、そりゃ気になるよ」
どーしよっかなと言いながら歩き出せば、いじわる!って後ろから怒った声がして、パタパタと追いかけてくる音も聞こえた。
足を止めて、くるっと振り返れば、おれが止まったのに対応し切れずに、アヤリがそのまま飛び込んでくる形になった。そのまま彼女を抱きとめて目をじっと見れば、やっぱり瞳の中には白い髪のおれが映り込んでいて、よく映える。黒髪のおれだったらこの深い色に溶けてしまうのだろうか。それはそれでいいな、なんて思ってしまう。
「おれが星だったらこうやって近付けないだろ?」
「……門使えばいいんじゃないかな」
「近界民きらいなのに?」
「確かに……」
外だし、すぐに離れると思ったけれど今日はやけに大人しくしているアヤリ。そういう気分だったのか、周りに人の気配がないからなのか。どちらにせよこちらとしては嬉しい限りだった。少しそのままの体勢を続けたあと、もぞもぞと動き出してしまった。身長はアヤリの方が高いため、すぐに抜け出されてしまう。残念。
「それじゃあ、私も星じゃないね」
「そうなのか?」
「だって、私も星だったらこうできないもん」
「おれこそ向こう出身だから会いに行けそうだけどな」
「離れてる時間、きっと勿体ないよ」
「いえてるな」
自分で出した考えが気に入ったようで、二、三歩先をスキップして、くるっと振り返り、帰ろっかって眉を下げるアヤリ。顔の横の長い髪が動きに合わせて揺れていた。