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「あ、千佳ちゃん」
「彩里さん、お疲れ様です」
お邪魔してます、と笑顔を向けてくれるのは梨本彩里さん。本部の隊員さんで、訳あってよく玉狛にいる先輩で、遊真くんと特に仲が良い。二人が一緒にいると、とても楽しそうで、見ているこっちが安心する。
「そういえば、この前の訓練でユズルに会ったってね」
「はい、話しやすかったです」
「そっか、よかった!いい子だからこれからもよろしくね」
さらに笑顔になった彩里さん。こっち座りなよってソファの場所を空けてくれる。最近の訓練の調子はどう?や狙撃手のみんなは元気?と話題を色々出してくれる。
初めて会った時は、すごく近界民のことが嫌いみたいで遊真くんのことを睨んだり、口調が強くて怖かったけど、それでも最初から私や修くんとは仲良くしてくれていたし、遊真くんともの関係も良くなって本当によかった。
「ふふっ」
「どうしたの?」
「彩里さん、楽しそうだなって」
「そう?」
「はい」
そっかって、再び微笑む彩里さん。彩里さんはたくさん辛い思いをして、あんまり笑ったりしなかったってレイジさんから聞いていたから、ちゃんと元気になっている姿を見ると、私も頑張ろうって思える。目の下の隈は相変わらず残っているままだけど、このまま楽しく過ごせればきっとよくなると思う。
「そういえば、この前ユズルと話してたんだけどね、千佳ちゃんのこと褒めてたよ」
「ユズルくんがですか?」
「うん、人が撃てないの勿体ないって」
「えっと」
「私たちの師匠も、撃てなかったからさ」
「あ、鳩原さんでしたっけ」
「うん」
少し俯く彩里さん。ユズルくんは怒ったけど、彩里さんは悲しいが先に来るみたいだった。
「彩里さんとユズルは同じ先生なんですよね」
「そうだよ、ユズルが弟弟子」
「だから仲良しなんですね」
「うん、今でも仲良くしてくれる、頼りがいのある男の子だよ」
「そうなんですね」
「だから千佳ちゃん、改めてユズルのことよろしくね!いい子だから!」
「はい、わたしも歳が近い友達ができて嬉しいです」


携帯電話のバイブレーションがポケットの中で震えた。頻繁に連絡をとるわけではないため、電話がかかってくるのは珍しい。
「…はい、あぁ、彩里。どうしたの」
「ユズル、なかなか長期戦になりそうだよ、頑張って」
「は?なんの話」
「千佳ちゃん…」
「雨取さん…。彩里、なんか余計なこと喋った?」
「なにも。ただ一つ教えておくね」
「なに…」
「千佳ちゃんの好きな物は、白米。じゃあね」
一方的に掛けてきて、言いたいこと言って切る姉弟子の行動は、最初の頃に比べたら自分のやりたいようにできてるんじゃないかなと思わせる。
(白米、おぼえとこ…)