「貴様、だけは……!」
拳を左の剣が砕け散り、それと同時に右の剣が脇腹を深く斬り裂いた。そして細身の身体は吹き飛ばされ、長椅子の列を破壊する。
直撃は逃れたというのに身体が震え、胸に激痛が走り、目眩さえ覚えた。剣は何処にいったのか、それを探す余裕すらない。
僧兵達は男の圧倒的な力を前に動けないでいた。
「ディバインセイバー!!」
フィリアの晶術が発動し、男の頭上に展開された陣から光雷が降り注ぐ。所謂上級晶術に分類される術、なのに男はその中で斧を振り上げた。
「なっ……!?」
「フィリアさん!!」
それが振り下ろされフィリアに向けて黒を纏った衝撃波が放たれたと同時に、リアラが勢いをつけ彼女に抱き着き攻撃範囲から逃れる。
「フィリアさん、大丈夫ですか……!?」
「え、ええ、……!!」
斧を持ち、男がゆっくりと近付いて来ているのが見えフィリアはすぐにリアラの前に身を移した。術では止められないどころか、カウンターを受ける事になる。
「貴方は……!!」
しかし足が震え、立ち上がる事が出来ない。
それに、“この男”から逃げたくはなかった。