しかし斧を奮った後の隙を見逃さず矢は放たれ、初級ではあるが晶術が一斉に放たれた。直撃すれば無傷では済まないそれは、全て男に直撃する。
流石に頭は腕で守っているが、その腕に矢が突き刺さっている。
確かに、突き刺さっている。
「……雑魚に用は無い」
晶術が当たった箇所は少し服が焦げたり裂けたりしているだけ。そして矢は、男がまるで雑草でも抜くかの様に自分の身体から引き抜いている。
その傷から滴る血は微量だった。
「な、な……!?」
「消え失せろ」
斧が闇を纏い振り上げられた。何が起こるか真っ先に理解したエミリオが接近し男の胸から左肩へ剣を走らせる。意外にも斬撃は通り、人と同じ赤い血を飛ばした。
「やはり貴様は……!」
「自ら我が領域に飛び込むか!」
その凶悪な笑みから察するにエミリオの行動を先読みしていたのか。
展開された領域はエミリオの身体を蝕み動きを鈍くする。その腹部へ叩き込まれたのは重い拳。