それを少女が“英雄”と呼ぶのは、時代故なのだろう。
頷き肯定するリアラ、しかし何かに気付き慌てて弁解する。
「でっ、でも悪い事には使いませんっ、それだけは信じてください……!」
「ええ、分かっていますよ」
朗らかな言葉に少女は酷く驚いていた。
「私には、貴女が悪い事を考えている様には思えません。深い事情があって、直向きに進むべき道を探している……私にはそう見えます」
「司祭様……」
「フィリア、で構いませんよ、リアラさん」
「え……ぇえっと……」
困るリアラを見て笑うジョブスだが、その表情は崩さずエミリオに小声で話し掛けた。
「総帥……この子……」
「さあ、今は何とも、……っ……!?」
突然エミリオは左眼を押さえた。感じているのは痛みではなく、不快な違和感。
「総帥? どうし……」
「誰です! そこに居るのは!」
ジョブスの言葉を遮りフィリアが叫ぶ、壁に向かって。エミリオも左眼を押さえたまま同じ場所を睨み付けていた。