「お手紙にも書きましたが……少なくともこの神殿に集まっているレンズの殆どは聖女エルレインの手の中にある様です。ただ国に渡している様子は全く無く、かといって神団内で何かしようとしている素振りも無く……目的が一切分からないのです」
「それはそうだろうな、今の時代レンズ絡みで、周りに素性があっさり分かるようじゃ聖女なんて立ち位置の維持は無理だ」
「ですね……それに聖女のあの“力”……触れただけで先天性の盲目に光を与え、動かない足に力強さを与える……正に“奇跡”としか言い様がありません。
……ですが、あの奇跡を目の当たりにすると……思い出すのです……」
「……神の眼、か」
エミリオが呟いた言葉に、伏し目がちにフィリアは告げた。
「神の眼は、奇跡を体現します……方法はどうであれ、実際天上王は“彼女”の病を癒し、右腕とした……治癒術が確立されている事も含め、レンズにはその力がある」
「って事はフィリア女史、聖女はレンズを使って奇跡を起こしていると……?」