頭を下げたまま上げようとしない若者にエミリオは言った。
「門番ならばそれくらい警戒心があった方が良いと私は思うがな」
「あ……ありがとうございます」
漸く頭を上げた若者に軽く頷いたエミリオはジョブスと共に大神殿へ足を踏み入れる。
一般人の立ち入りを禁じるその場所の静けさは神聖ではなく、2人には異様に感じた。
「此処にずっと居るなら、ウイルに説教食らっている方がいいですわ」
「昔は割りと居心地が良かったんだがな……」
その足は、時々すれ違う教徒に一礼を受けながら真っ直ぐ礼拝堂に向かい、大きな扉を開く。中は当然広く、最前列の長椅子に座る女性以外人の姿は無い。
女性は扉が開く音に立ち上がり振り向き、微笑を浮かべた。
「リオンさん、ジョブスさん、お久しぶりです」
「ああ」
「お久しぶりです、フィリア女史」
訪問者である2人はフィリアに歩み寄り、彼女の隣にエミリオ、その隣にジョブスが腰を降ろす。そして最後にフィリアが座り神妙な面持ちで早速話を切り出した。