2人が進む露店区域は近くに港が出来た事もあり様々な商品が並んでいた。
売買が繰り返されているそこでエミリオは、何やら大きな木材を運ぶ知っている顔を見つける。
「グリッド、何をしている」
「ん、おお、エミリオ殿か。橋の修理用の材料を集めているのだ」
ゆっくり木材を置いたグリッドは、大人の男に似合う笑顔を見せた。
「つまり、橋の倒壊は耳に入っていたわけか」
「勿論だ、俺はこの区域の耳であり眼だからな。ただ、もう少し水気が引くまで作業には取り掛かれんのだが」
「そうか、暫くしたらセインガルドから応援が来るだろう、その時は頼む」
「フッ、私に任せておけ。ところで、我が弟子達はそちらでちゃんとやっているか?」
グリッドの弟子、それは即ち“漆黒の翼”を継いだ物達。やや視線を逸らしエミリオは頷く。
「まあ、まだまだへっぴり腰ではあるが……ちゃんとやってはいる、だろう」
「そうかそうか、なら良かった。アイツ等若いからな、心配していたんだ」