「いきなり災難ですねー」
「……そうだな」
駆け寄って来たジョブスの言葉に頷くエミリオは手を振る御者に手を上げて応え、街へ戻って行く馬車を見送った。
「じゃ、行きましょか」
「ああ」
2人は慎重に崖を降り始める。どちらも悪路には慣れている為難なく進んでいく。
その途中には水が流れている場所もあり、そこを中心に緑があった。
「自然って凄いですねェ、こんなトコでも自生して」
「そうだな、人工的に作られたモノより遥かに良い。大神殿の者が此処に生えている約束を採りにきているらしいな」
「そりゃ凄い行動力、俺も見習わないと」
「何でも、フィリアの薬草学研究に使うんだそうだ」
フィリアという名を聞いてジョブスは一瞬遠い所を見て、それから新たな話題を切り出した。
「薬草といえば、カルバレイスの流行り病についてはどうなったんです?」
「原因は分かったんだが、未だ確実となる特効薬が出来ていない。それこそフィリアの知識も借りているが、予防するので精一杯だな」
「なるほど、病気って嫌ですねェ……」