笑顔の子供達にカイルは一瞬だけ目尻が熱くなった。
しかし己の決意を笑顔に変えて彼は返す。
「うん、ありがと皆!」
此処が自分の帰る場所、そう改めて己に刻んで右腕を高く上げた。
「行ってきます!!」
「行ってらっしゃい!!」
笑顔を背中に受けて少年は歩き出す。振り返らずに進めば、町の外れに微笑を浮かべたロニが居た。
「ホームシックは大丈夫か?」
「大丈夫だって、男に三言は無いってね!」
「二言、な?」
「あれ? あ、御守りありがとね」
礼を言うとロニは得意気に笑う。
「あのくらいどうって事ねェさ。それより、この町をちゃんと眼に焼き付けておけよ」
「え?」
「もう二度と、この景色が見れなくなるかもしれないからな」
そうだ、とカイルは内心緊張を覚えながら町を出た近くにある丘へ行き、生まれ育った町を見る。あの孤児院だけじゃない、この町そのモノが自分の居場所だったのだと再認識する。
「あー、よく警鐘鳴らして怒られたっけ」
「だったな……15年、お前は此処で育ったんだ、忘れるんじゃねェぞ?」
「忘れるわけないって、此処には家族が居るんだから!」