彼は母の手が震えている事に気付かない。
隠している母は笑顔を作り息子を見た。
「そうね、あのスカタン見つけたら首根っこ掴まえて連れてきてちょうだい」
カイルに近付き手渡したのは小さめの布袋と、あの御守り。先ず布袋の中身を確認すると、薬と現金が入っていた。
「母さん、コレって……」
「アンタと同じ癖字の“あしながおじさん”がリオン経由で送ってきたヤツよ、お金が無きゃ旅なんて出来ないわよ? アンタのお小遣いで何処までいけるのかしら?」
「あ……えっと……」
確かに旅には金が必要で、貯めていた小遣いも大した額ではない。しかし孤児院にとって貴重な金受け取るべきなのか迷っていると、思いっきり背中を叩かれた。
「いてっ」
「グジグジしないっ、貰える物は貰うのがウチの鉄則! この分はアンタが旅の中で勉強して稼げる様になったら返してちょうだい、利子は付けないでおくから」
「……ありがとう」
改めて母の大きさを理解する。