満面の笑顔のルーティは向かい側に座る。カイルが何か言おうとすると、彼女はまるで遮る様にして言った。
「ほらほら、早く食べて食べて」
「ん……」
浮かない表情でマーボーカレーを口に運ぶ。それは何時もと変わらない母の味であるが、今だけは少し違う様に感じた。
「あ、八百屋の奥さんがね、この間セインガルドに仕入れに行った時に七将軍を見たって言って興奮したのよー。あと20年若かったらって言っちゃって、旦那さんがねー」
「か、母さん……」
楽しそうに、それは楽しそうに彼女は話す。
「そうそう知ってる? 実はリオンの奴セインガルド七将軍の候補だったのよ昔。でもあの性格じゃねー」
「母さん……」
違和感に不安を覚えた、話は続いている。
「今でも実業家やってるなんてビックリよ。その手腕も、才能ってヤツかしら……」
「母さん!!」
立ち上がり叫ぶとルーティは口を閉ざし、笑顔は消えた。しかし、いざ此処に来てカイルは二の句が継げず立ったまま押し黙る。