何時もならば起こしてもらうカイルは、今日は珍しく誰の力も借りずに眼を覚ました。昨夜の事を考えればそれも当然かもしれないが。
そして何時もならばもう聞こえる筈の子供達の声は聞こえない。外は青空が広がっており、その事が疑問を更に大きくする。
「……とにかく、言わなきゃ……ちゃんと……」
着替えを済ませ、歯を磨き、顔を洗い、決意を固めた少年は母親が居るであろうリビングへ向かう。
「か、母さ……え?」
リビングのテーブルには、朝にしてはやけに豪勢な食事が並んでおりカイルは驚き眼を白黒させた。
ルーティは未だ朝食の準備をしながら息子の名前を口にする。
「おはよーカイル、ちゃんと歯磨いてきたの?」
「う、うん……ねえ母さん、コレは……」
「じゃあちゃっちゃと座って座って、せっかく作ったのに冷めちゃうでしょ?」
「……うん……」
おかしな空気を感じつつもカイルは椅子に座った。
その目の前にルーティが置いたのは、マーボーカレー。
「なっかなかの自信作よ、文句なんて言わせないんだから」