俯くルーティの声は少し震えている。
「矛盾してるよね、ホント……カイルの為って思いながら、アタシ自分が傷付くのが怖くてさ……“あんな事”、きっともう起きない筈なのに……」
「そんなの……! そんなの、俺だって同じですよ……」
「でもロニは“行動”してくれたでしょ、凄く、感謝してる」
「……単なる“冒険”の真似事のつもりだったんですけどね」
英雄に憧れる英雄の子。
それを少しでも叶えたかっただけと彼は言う。
「まさか火を点ける事になるとは……」
「フフッ、人生分からないわね」
目尻を拭い彼女は顔を上げ、そして頭を下げた。
「ロニ、カイルの事、お願い」
「な、か、顔上げてくださいよ!」
「うん」
言われてすぐに上げたその顔は真剣そのモノだった。
「でも、自分の事もちゃんと考えてね……アンタだってアタシの子供なんだから」
「……はい」
英雄ではない、彼女は母親なのだと彼は改めて実感する。
例えその心が、誰よりも傷だらけだとしても。
雨音の中でそう思う。