それから笑っているジョブスを横目で睨み付ける。
「笑うな」
「すんません、昔は“セインガルドの薔薇”とか言われていた人が、今ややり手の実業家。だけどその裏では……って思ったら面白くって」
「ひっぱたくぞ」
細めた眼をふと窓に視線を向ける。ガラスの向こうでは雨が降り続いていた。
「……だが悪かったな、付き合わせる事になって」
「何を今更、俺と総帥の仲じゃないですか。それに聖女側の動きが怪しいと思ってるのは陛下も当然、俺達も同じだし。でも信者の数とエルレインの力を考えると、先ずは出来るだけ小規模で怪しまれない範囲で調べるた方が得策でしょ」
「お前は軍人っぽくないしな」
「やっぱりそれ言っちゃいますよねェ。でもそれならわざわざ総帥が動かなくても良いんじゃ?」
ジョブスの言う事も最もだろう。
エミリオ・ジルクリストは、18年前とは違う形で世界の経済の要であるオベロン社のトップ。もしもその身に何か起きれば世界を揺るがす事になるのは眼に見えている。
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