雨の音、それを聞きながら彼は眼を覚ました。
「……私の眼前で何をしている」
「いやー、イイ男はやっぱりイイ男だなって」
「馬鹿な事を言ってないで退けろ」
「はいはいっと」
目の前に天井が現れるとソファーから起き上がり、相変わらず軽い調子の男に溜息を吐く。
「ジョブス……何故此処に居る」
「そりゃあ総帥の護衛の為に決まってるでしょう」
「出立は明日だ」
「いいじゃないですか、減るもんでもないし」
腰に剣を下げた私服姿の彼は笑い、ふとテーブルにある封筒と手紙を指差した。
「お見合いの申し込みですか」
上質な紙質である上に、差出人には貴族の姓が書いてある。宛先であるエミリオ・ジルクリストその人は、再び大きな溜息を吐いた。
「もう断った、今はそれどころじゃないからな」
「はー勿体無いなァ、俺に1人くらい分けてほしい」
「もう少し真面目に振る舞えば良いんじゃないのか、ウイルに先越されてグダグダ言うくらいなら」
「凄い、痛い所を突いてきますね、相変わらず……」