水路に居た時とは違う、まるで突き放す様な言葉にカイルは一度は戸惑うが退きはしなかった。
「俺、助けてもらったお礼してないし……」
「そんなモノは要らん、ただの気紛れだ」
「でも、……あ、そうだっ」
何か思いついたのかカイルは明るい笑顔で告げた。
「ウチに来てよっ」
「……ハァ……」
ユダは深い溜息、ロニは開いた口が塞がらないでいる。
にも関わらずカイルは続けた。
「夜だしさ、町には宿屋もあるしゆっくりしたらいいと思うんだけど……」
彼は感謝の気持ちを表しているだけなのだろう、恐らく他意は無い。それを分かっているのかロニは呆れつつも口は出さなかった。
返答を求められているユダは微笑を浮かべる。それは皮肉にも、寂しげにも見えた。
「お前にはやりたい事があるんだろう? なら僕に構っている暇があるなら鍛錬を積んで、そして世界を知るといい……夢を持ち、努力するだけなら自由だからな」
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bkm
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