「……で、お前等何時まで」
「ああ、そうか!!」
ユダの言葉を遮ったのはロニ。
「俺がチャンピオンになれば世の女子は俺に釘付けじゃないか! 何で今まで気付かなかったんだ!」
さもそれが世を覆す名案だと言わんばかりに先程まで陰っていたであろう瞳は輝いている。
それに待った掛けた人物の目は、対照的に据わっていた。
「その前に私が叩き潰してあげるわよ」
「ふっ、お前の実力は折り紙付きだろうが俺だって元は神団騎士! そう簡単に膝をつくかよ! なあカイル!」
「うーん……どうだろ、リムルはスッゴい強いと思うよ?」
カイルの言葉が予想外だったのかロニの表情は驚愕以外の感情を無くしている。それが更なる自信に繋がったのかリムルの表情は強気。
一触即発とまではいかないこの現状ついて、こっそりリアラはユダに問う。
「ユダは、どっちが勝つと思う?」
「……実力自体は五分五分だろうが、動機がな」
「ああ……私も、リムルを応援しちゃうわ……」
味方の居ないロニ。
しかし彼は、これでめげる男ではなかったらしく胸を反らしている。
「甘く見てもらっちゃ困るぜ? 俺がどれだけ素敵で頼れる大人の男か見せてやるよ。リムルっ、表に出な!」
「いいわよ、ギッタギタにしてやるわ」
「その活きや良し! 相手が女でも真剣勝負では手加減しねェからな!」
高笑いと共に彼は去っていく。
それを見送り、カイルは呟いた。
「何かロニ、変だったね」
「え、そう?」
“変”を微塵も感じ取れなかったリアラが訊くと、彼は頷きながら不思議そうに考え込む。
「何て言うかさ、らしくないっていうか」
「らしく、ない……?」
「気のせいかなァ……」
考えて、そして気のせいだという事にしたのかすぐにカイルはリムルに声を掛けた。
「リムル、ロニがごめんね?」
「べつにいいわよ、私もロニがどのくらい強いか知りたいし。あんなんでも神団騎士だったんでしょ? 手応えが無きゃ困るわ」
気合いを入れながら部屋を出ていくリムルを見送ってから、やっと注目はユダに集まる。
「ユダ、一緒行く?」
「行かない、さっさと出ていけ」
「分かった、じゃあまた後でねっ」
カイルとリアラも去り、漸く静寂が戻った室内でユダはベッドに横になった。
瞼が落ち、無意識に過去と現在のノイシュタットが重ねられ、そのまま深い眠りへと落ちていく。