人々の熱狂は闘技場の外まで響いているのだろう。

 それほどに熱い闘いが行われている中、そろそろ闘技場を出ようと移動する彼等を呼び止める声があった。


「待ちなオメェ達!」

「……厄介なのに見つかったわね」


 軽く肩を落とすリムルの前に立ち塞がる巨漢。彼を見てカイルの目が輝いた。


「おうリムル、今日は試合には出ねェのか?」

「見ての通り忙しいのよ。カイル、この人は……って、説明の必要は無さそうね」


 溜め息を吐くリムルを尻目にカイルは元気よく彼の名前を叫んだ。


「コングマンだ! すっごい、本物だ!」

「んー? オメェまさかスタンの……」

「はい! 俺、カイル=デュナミスです!」


 コングマンの表情が一瞬だけ険しくなった事に興奮しているカイルは気付かない。


「まさかスタンの息子が来るとはな……いや、いつかこの日が来ると思っていたぜ」

「何よ、カイル相手に雪辱戦でもやろうとでも?」

「何おう、俺様はそんなチンケな男じゃねェ! スタンとの決着はスタンと着ける、それが男の闘いよ!」
「スタンさんがアンタに負ける筈ないわ、何回やっても同じよ」


 胸を張り断言するリムルと一切退く様子の無いコングマンの間で火花が散る。闘技場の有名人達の睨み合いに当然見物人が集まり、次第に熱が高まっていった。

 どうしたものかとロニは肩を竦め、リアラは心配そうに状況を見ている。そしてカイルは、物怖じせず火花の中心に割って入った。


「俺も見てみたいなっ、父さんとコングマンの試合!」


 違和感なんて微塵も無い、子供ならば当然の願い。憧れの眼差しで少年はそれを言葉にする。

 賑やかなこの場でこの空気とは違う雰囲気を一瞬見せたのはロニとコングマン、そしてリムルだけだった。


「へっ、あの風来坊がビビらずにここまで来れたらやってやるぜ」

「ホント!? わあ、楽しみだなぁ」

「ま、結果は目に見えているけれどね」


 リムルの一言で再び火花が散り始める。

 一触即発という言葉が似合うこの状況が動いたのは、リムルの腕を掴んだロニによる闘技場からの強制退出が決行された時だった。



 


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