「なっ、いきなりっ、えっ!?」
「あー……脈はあるっぽいわね」
「ま、待ってっ」
何やら納得している冷静なリムルとは対照的に、リアラはすっかりパニックになっていた。
「わたしっ、私一言もそんな事……!」
「だって顔に書いてあるもの。そして、私にちょっぴりヤキモチ、違うかしら」
「え……、え……?」
自分の事なのにハッキリとした答えが返せない事にも彼女は驚き、思わず彼を見た。
闘いに夢中になっているのか、ロニと共に中央を見ていて視線に気付く様子は無い。
「安心した、リアラも普通の女の子なのね」
「……え?」
また予想していなかった言葉に首を傾げ、無意識に目の前の少女を見つめる。そこに先程の笑顔こそ無いが、柔らかい雰囲気は残っていた。
「最初見た時なんか、浮世離れというか、私が知ってる女の子とは違う様な気がしたから」
「……それは」
「あ、安心して、私カイルの事そういう風に考えた事無いから」
何が安心なのだと声にならない訴えをリアラが上げるが、相手の態度は全く変わらない。
困っているという無防備の状態に突然リムルではない誰かに肩を叩かれ小さく悲鳴を上げた。すると後ろからも小さな声が上がる。
「わっ、ご、ごめん!」
「……カイ、ル?」
振り向くとそこにカイルが居た。
彼は少しすまなさそうにしながら再び謝罪する。
「ごめんね、驚かせちゃって……大丈夫?」
「うん、どうしたの?」
肩を叩いたという事は何か用事があるのだろう。
訊くとカイルは視線を泳がせながら用事を伝えた。
「その、もしかして、つまらないかなーって、思って」
「つまらない、って?」
「ここ、女の子には合わない、かと思って」
考えて、周りを見て、リアラは納得した。
観客席は熱狂している女性の姿を確認出来るが、やはり圧倒的に男性が多い。それが出場者なら尚更だし、リムルのやり取りを思い出せば自分はあまり闘いを見ていない。
「そんな事無いわ、ちょっとびっくりしてるだけ」
「そう、なの?」
「うん、こういう所来た事無かったから……」
リムルとのやり取り、それを思い出して言葉が詰まる。
目の前に居るのはカイルで、先程リムルに何を言われたか。
「リアラ? どうしたの?」
「う、ううんっ、何でもないわ! ほら、次の試合始まるみたいよ!」
「うん……?」
よく分かっていないカイルが首を傾げると、リムルだけでなくやや遠巻きに見ていたロニも溜め息を吐いた。