ゆったりと明るい朝の時間、不意にドアが開き皆は自然とそちらを向いた。入ってきたのはエミリオではなくバッカスであり、そしてもう一人カイルと同年代の少女が居る。
少女の姿を認めたカイルが立ち上がりその名前を呼んだ。
「リムル!」
「カイル、久しぶりね」
落ち着いた声は大人びており、駆け寄ったカイルとは対照的だった。
「会えて嬉しいな、元気だった?」
「当然よ、体調管理も剣士として大事な事だもの」
「そっかぁ、へへ、よかった」
リムルと呼ばれた少女の髪も鮮やかな金色でカイルの物によく似ている。
性格こそ対照的だが仲は良さげで、それを見つめながらリアラはロニに問う。
「ロニ、あの人もしかして……」
「ああ、リリスさんの娘。だからカイルの従姉妹だな」
「うん……仲良し、なの?」
「そりゃカイルだしなァ、身内で仲悪いって事は無いだろ」
確かにそうだ、寧ろそうじゃない方が違和感がある。
しかし、とリアラの表情は何処か優れない。
「……ほう、リアラさん?」
「え、な、何?」
不適な笑みのロニにたじろぐと、彼は指摘をする――前にエミリオが戻ってきた。
「ん? なんだお前達、来ていたのか」
「お、おはようさん」
「おはようございます、エミリオさん」
エミリオに促されバッカスとリムルも共にソファーに腰を下ろす。
その時、それに気付いたカイルが訊いた。
「エミリオさん、さっきのは?」
「ん? ……ああ、ファイルか。預けてきた、あとは専門家に任せるしかないからな」
「カルバレイスの人達、大丈夫かな……」
「大丈夫、とはまだ言い切れんが、良い方向に向かっていると信じたい所だな」
そう答えて、彼が見たのは周りと距離を取る青年。何処か気だるげで、しかし意識は間違いなく周りの話に向けられている。