「ま、まあ、ある程度自給自足出来れば他所の力を借りる必要性が下がる。あまり介入すると昔のノイシュタットみたいになるかもしれないしな」
「でも、豊かな暮らしを手に入れるなら移住した方が良いのでは?」
「んー、それはそうなんだろうけども、お国柄ってヤツかね? 天地戦争の遺恨が残るカルバレイスの人間は余所者の介入を嫌う上に独自の宗教をもってる。そんな人達が他所の国で上手くいくとは思えないな」
「……カルバレイスの人達は、豊かな暮らしより大昔の遺恨の方が大事という事……?」
疑問に思うのは当然の事だろう、現にカイルも首を傾げている。
子供の疑問に、大人は現実を答えた。
「勝者と敗者じゃ、同じモノを見ても受け取り方が全く違うのさ。勝者が下心無しに仲直りしようって言っても、敗者には嫌味に聞こえるだろ」
「そうかなぁ……? 仲直り出来た方が、皆幸せになると思うけど」
それは恵まれているからこその考え。カイルの言葉をそう考えたジョブスだが、すぐにそれを振り払う。
未だ釈然としていない二人に彼は更に現実伝える。
「でも、そんな中で変わろうと努力する人間が居るのは確かだよ」
「え? ……あ、そっか、じゃなかったら村なんて作れないよね」
「そのキッカケが18年前の戦いってのが皮肉なモンだが、まあ前向きに考えるべきなんだろうな」
「そっかー……じゃあ、これからどんどん仲良くなれるね」
言うだけなら簡単だと意地悪な事を考えてしまうのは自分が大人だからだろうか。
自分を笑っていると、何かに気づいた様子のリアラが言った。
「カルバレイスの人は、カルバレイスを捨てるじゃなく守る事を選んだんですか?」
「そうなるのかなァ……愛国心、で合ってるかは分からんが。良かれ悪かれ大昔から築き上げてきたモノがあるんだ、それを簡単には捨てられないのが人間の心ってモンだろうな」
「……人の心って難しいですね」
「簡単だったら俺達みたいな軍人必要無いかもな」
皮肉な笑みを浮かべて、彼は続ける。
「でも難しいから他人との繋がりが深くなって、それだけ価値が出るんだろうさ」
「価値、ですか?」
「そう、一度きりの人生なんだから出来るだけ価値のあるモノにしたいだろ? その骨組みとなるのが人間関係だって俺は思うね」
「俺もそう思うっ、友達沢山居た方が楽しいし! ロニもそうでしょ?」
何故か得意気なカイルの頭をロニが乱暴に撫でた、満面の笑顔と共に。
「そうだな、色んなお姉さま方とお友達になれたら最高だな」
「ロニが言うお友達って何か意味が違う気がするんだけど」
それは正しい判断だと誰もが思っている。