「ユダ凄いね、薬の事とかも分かっちゃうんだ」
「アレは……たまたま覚えがあっただけだ、褒められる様な事じゃない」
「褒められる事だよ、だって沢山の人を助けられるんだよ? 寧ろ誉めなくちゃダメだよ、コレは」
「うんうん、そうだなカイルの言う通りだよなァ」
わざとらしく首を縦に振るロニをユダは睨み付けるが、すぐにその視線は床に落ちる。その表情には諦めに似たモノが感じられた。
「好きに言ってろ」
「ああ、好きに言わせてもらうぜ」
「ハァ……」
これ以上は話し掛けてくれるなと言わんばかりに彼は顔を背け、サラダを口に入れる。
照れ隠しであろうその様子にジョブスが笑みを溢していると、彼にリアラが質問をした。
「ジョブスさん、さっきの流行り病の話って、そんなに大変なんですか?」
「ん? あー、そうだな……俺は現場に言ってないけど、酷いみたいだな。こういうので真っ先にやられるのは子供だし、しかし特効薬はなかなか完成しないしでなァ」
「じゃあユダはやっぱり凄いね!」
「ハハ、そだな」
横目で見れば、居心地の悪そうに紅茶を飲んでいる。
ロニもそれを見つつ、思い出した事を口にした。
「そういえば、カルバレイスってエミリオさんが作った村があるんですよね? ホープタウンっていったか」
「作ったってか、援助したってのが正しいかね。貧民層の人間が自給自足出来る様にって作られた村だ、見違える様に暮らしが良くなったって聞いたな」
「自給自足……? どうしてですか?」
リアラの新たな疑問に答えたのは、意外にもカイルだった。
「カルバレイスはね、砂漠と火山の国で、貿易でお金を稼いでるんだって。だけど貿易だけで暮らせる程物を作れるわけじゃないから、砂漠でも自給自足が出来る様にしてるんだって」
「カイル……詳しいのね」
驚いているのはリアラだけではない。ユダも含めたその場の全員が、普段の彼からは到底出ない様な知識に驚いていた。
しかし種明かしは早い。
「へへ、母さんがよく話してたから。節約家は物流を把握しておくものだって」
“母さん”の一言で大方の事を察する事が出来てしまう辺り、彼の事を理解してしまえているのだろう。
本人だけが気付かない空気を打破したのは、軽く咳払いをしたジョブスだった。