「どうせ俺なんて……」


 朝の客間の隅で両膝を抱え落ち込む男の背中、リアラが首を傾げた。


「ロニ、一体どうしたの?」

「えげつないスピードでフラれた」


 答えたジョブスの目には哀れみしか無い。


「例の受付嬢ね、さっき書類を届けにって来てね、総帥が紹介するより先に口説こうとしたんだが……言葉を発するより速くぶった斬られた。“私、ナンパ野郎は好みじゃないんです”、とな」

「わー……その人、ロニがナンパや……女の人が好きだって見抜いたんですね……」

「流石受付嬢といった所かね、見る目がある……と言っちゃロニ君に悪いか……うーん……」


 どう慰めたものかと悩むフリをするジョブス、一方リアラは特に気にせずソファーに座りこの場に居ない者達を待つ。

 リーネとはまた違った穏やかな朝、しかし窓から入る日の光は同じ。目を閉じてゆっくり息を吐いていると、ドアが開きユダが入って来た。


「あ、おはようユダ」

「ん……ああ…………うん……」


 リアラへの返事が曖昧なのは部屋の隅が目に入ったからだろう。察したのかその目は冷たく、そしてすぐに余所へ向く。


「ユダ君よ、調子はどうかね」

「特に言う事は無い」

「なら大丈夫か。しっかし総帥まだかねー、腹減っちまったよ」

「カイルを起こしてくるって言ってたから……まだ掛かりそうですね……」


 と、リアラが呟いた直後彼は現れた。右に分厚いファイルを、左に甥を抱えて。


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bkm

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