支部である屋敷に到着すると、数人の使用人が彼等を出迎えた。
「お疲れ様です、エミリオ様」
「ああ、報告は後でいい、彼等に部屋と簡単は食事を」
「かしこまりました」
彼が使用人と話している間、バッカスが改めて客人達を見つめる。
「しかしまさか、カイルとロニも彼に同行しているはなァ」
「えへへ、ちょっと無理して頼んだ」
「そらそうだろうな、ロニはともかくカイルをパーティに加えるなんて俺には出来ねェわ」
「えー!!」
子供らしく反論する少年を、大人の余裕を見せながら相手をする彼はエミリオの話が終わったのを見計らい自分も会話を切り上げた。
「そんじゃ俺は帰るわ、リリスはまた闘技場に泊まってんだろうけど」
「ああ、また明日」
「おう、明日な。カイルもおやすみ」
「おやすみなさい!」
含みの無い明るい笑顔で屋敷を出ていくバッカスを見送った後、すかさず使用人の男性がカイル達に声を掛ける。
「皆様お部屋までご案内致します。カイル様、ロニ様、ジョブス様で一部屋、リアラ様、ユダ様にそれぞれ一部屋、エミリオ様からのご指示です」
「またユダが一人部屋……って、そうか……」
不満を口にしようとしたロニだが、指示の意味に気付きそれを止めた。流石にカイルも気付いたのか、無表情で口を閉ざしたままのユダを見る。
「ゆっくり休んでね」
「…………そうする」
特に反論も無くそれを受け入れた彼はほんの一瞬だね、エミリオを視界に入れる。
「リアラ、欲しい物があったら頼んでおけ、用意させよう」
「えっ、でも……」
「野郎はともかく、女性は何かと物要りだろう? 此処の使用人にはそういう事に詳しい者も居るからな」
「……じゃ、じゃあ、お風呂、入りたいです。ずっと霧で、髪が……」
緊張しながら伝えたそれに、女性の使用人がリアラに声を掛け共にその場を後にした。
その光景を見ていたジョブスとロニの目は何処か悲しい。
「ああいうのサラッと出来ねーから俺達モテねーのかなぁ」
「かもしれないですねェ……」
自覚した所でどうにかなる事でもないと分かっている二人に、辛辣な言葉が飛ぶ。
「男として最低限の心遣いだろうが、下心見え見えの野郎共」
「最低限……」
「マジかよ……」
遠くを見つめる男達を見て、今度はカイルの疑問が飛んだ。
「ユダ、下心って何?」
「……モテたいモテたいうるさいって事だろ」
「なるほど」
色んな意味で疲れが募った夜の時間だった。