霧の中を安全な道を選び進み、時折現れるモンスターを倒し、着実にパーティは目的地へと近付いていく。それに連れて霧が徐々に晴れていく最中、ユダが不意に足を止めた。


「どうした」

「……雨が来る、風もだ」

「えっ、でも空青い……」


 霧が薄れた青空をカイルが見上げた瞬間、強風と共に雨が身体に打ち付けられた。

 皆はジョブスが指差した巨大な岩を盾にする様にその影をへと駆ける。


「びっくりしたー、突然だったね!」

「不思議ね、空が青いのに……」


 見上げる空はやはり青い。

 その理由を濡れた顔を袖で拭うエミリオが答えた。


「別の場所の雨が風で運ばれたんだろう、一時的な物だ」

「へぇ、天気雨って不思議だなって思ってたけど、そういう事だったんだ」

「自然の力って凄いんですね」


 彼の話に感心するカイルとリアラ、その視線は不意に空を見上げていたユダへと向けられる。


「ユダも凄いよね、雨が来る分かっちゃうから」

「ん? ……べつに、大した事じゃないだろう」

「そんな事無いわ、ユダが居なかったらもっと濡れていたでしょうし」

「……それは良かったな」


 愛想の無い返事、それにすぐさま反応し不適な笑みを浮かべたのはロニ。


「なんだお前、照れてんのか?」

「だが旅をするならこれくらいの知識はあった方が良いだろう」

「露骨に無視してきやがる」

「天気雨だと虹も見えやすいんだったか」


 その存在が最初から無かったかの様にユダの視線は目を輝かせる少年少女にだけ向けられている。無理矢理視界に入ろうとすれば瞳は違う場所へ動いた。


「楽しそうですねェ、こんな風で」

「強風だとテンションが上がる奴は一定数存在するだろ、年齢問わず」

「それはアレですね、俺の事ですね」

「酔った勢いで巻き込んでくれたからな。アレは楽しかったな、ああ楽しかった」


 抑揚の無い言葉に反論意見なんて出る筈も無く、乾いた笑いは風雨に掻き消される。





 


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