三人で朝食の準備をしていると、水を汲みに行った二人とすっかり目を覚ましたカイルが戻って来た。
温めた缶詰めと軽く焼いたパン、そしてコップに注いだ水をテーブルに並べ、朝食の時間を迎える。
「それにしても、ホントさコングマンの物が沢山だね」
改めてそれに触れるカイルに、反論意見が思い浮かぶ事も無くなったロニが反応した。
「まあ、ヒーローだからなァ……目立ってナンボの所もあるだろうし」
「でも実際凄いよな、一応現役は退いてるんだろ? それで此処までの自己アピールは下積みが無きゃ無理だ、普通だったら白い目で見られる」
「ロニがナンパしてビンタされるみたいな感じ?」
「カイル君のその何気無い毒舌、嫌いじゃない」
テーブルに突っ伏した青年には誰も触れないままリアラが首を傾げる。
「ノイシュタットの貧富の差ってそんなに酷かったのかしら……コングマンがヒーローになる程に」
「そうだな、貧富の差……というよりは、意識の差と言った方が正しいかもしれん」
少女の疑問に、コップを置きつつエミリオが答えた。その静かな様子に、自然と皆の視線が集まる。
「ノイシュタットの富裕層は元々セインガルドの貴族や商人でな、貿易の為に移住してきたんだが……地域の発展の裏側で地元の人間との意識の違いが摩擦を生み、そして貧富の差に繋がった」
「発展による恩恵への利権主張が激しかったらしいですからねェ。で、力を持っていた移民側がそれを手に入れ、地元民を完全に敵に回したと」
「それを変える為に立ち上がったのがコングマンってわけですね」
復活したロニが沁々と想いを馳せている隣で、カイルは片頬を食事で膨らませながら呟く。
「母さん言ってたよ、お金はあるにこした事は無いけど、あったらあったで大変だって。ノイシュタットの人達が正にそうだったんだね」
「ルーティは風邪でもひいてたのか?」
「総帥、今指摘するべきは多分そこじゃない」
この弟も大概だとジョブスは思うが、賢明にもそれを口に出さず水と共に飲み込んだ。