「そうだよな、男は筋肉あってこそだよな……」
「俺、孤児院に帰ったら鍛えるんだ……」
「いいからさっさと水汲んでこい」
朝一番、現実逃避をする軍人と元神団騎士を小屋から蹴り出したエミリオは分かりきっていた現実に向き合う。
「さて、どうしたものか」
「こうして考えると、死者の目覚めってホント凄かったのね……」
「……死者と同列なわけだしな」
ぐっすりと眠る少年にエミリオだけでなく、リアラとユダも溜め息を溢していた。
「ルーティの苦労を考えると頭が下がるな」
「毎朝起こしてるって事ですもんね……」
「目が覚めるツボを押しても効果が無いからな……何でこんな所まで親父に似たんだか」
そう愚痴を吐きながらエミリオはチリビーンズの缶詰を手に取ると、カイルの耳元でゆっくりと開ける。
「お前の朝飯、ロニが全部食ってしまうぞ」
「ふぇ……あさめし……?」
目を開けないまま起き上がったカイルは缶詰めの匂いに気付いたのか、目を開けながら缶詰を見た。
「……朝飯!」
「顔洗ってこい、先に出てしまうぞ」
「うん!」
先程までの寝坊助は何処に行ったのか、カイルは溌剌としながら小屋を出ていく。
甥を見送った後の叔父の溜め息は深く重い。
「続けて同じ手が通用しないのがな……」
「それがカイルらしいで納得出来ちゃうのが……」
「否定出来んのが悲しい所だな」
開いた缶詰めをテーブルに置いたエミリオがふと
暖炉の方を見ると、ユダが此方に背中を向け火の調節をしていた。何時でも消せる様に、且つ朝食を温められる程度の大きさの火にしているのだろう。
隣に腰を降ろし、薪の位置を変えている彼に声を掛ける。
「ユダ、結局朝まで番をしていたのか」
「何か問題があるのか?」
「敢えて言うなら体調の問題がな」
「なら問題無いな」
果たしてその言葉は信用してよいものなのか、内心悩みつつも疑問や否定の言葉をエミリオは飲み込んだ。