「何で君ら筋骨粒々なポスターじっくり見てんの?」
背後からの声にロニ、ユダ、リアラが振り向くと、水が入ったバケツを持ったジョブスが立っていた。
彼はバケツをエミリオとカイルが火の調整をしている暖炉の近くに置くと、改めてポスターを見つめる。
「俺もまあ、見られて困る鍛え方はしてないけどさ……流石に此処まではな……恐れ入るわ……」
「意外と軍人ってこのタイプ少ないですよね」
「維持が大変だからな、ずっとトレーニングしてるわけにもいかんし。別の部隊に筋肉バカ居るけど軍服自腹の特注サイズだからな、前が閉まらんのだと」
「……何事も適材適所ですね」
筋骨粒々に乾いた笑いを溢す背中を見ながらリアラはユダに問う。
「ユダも筋肉って欲しい?」
「間に合ってる」
「それって、ユダって見掛けによらず……!?」
「そういう意味じゃない」
冷静なツッコミをすると背後から声が掛かった。それは至極冷静で、分かりやすく含みを持たせている。
振り返ったそこにはやはり彼が立っていた。暖炉の火が小さく音を立てる中でソーサラーリングは差し出された。
「助かった、返すぞ」
「…………」
自分の持ち物をユダは受け取らず、腰を下ろしポスターが無い壁に背を預ける。
その行動の意味を彼は、火を見つめながら呟いた。
「アンタが持っていればいい、その方が有事の時に対処しやすいだろう」
「……お前が言うなら、そうしておこう」
読みきれない意図、決して邪な事などではないと考えるのは単なる願いか、根拠の無い確信か。
譲り受けたそれを懐にしまったエミリオは、気を取り直そうとカイルに指示を出した。
「カイル、そこの荷物に保存食があるから好きな物を選べ」
「いいの!?」
「常識の範囲内ならな。缶詰と乾物が主だったか……確か酒もあったか?」
「アルコールは色々使えますからね。……一杯くらいなら――あー冗談ですよじょーだん」
隻眼睨まれたジョブスが慌てて無実を主張していると、目を輝かせたカイルが缶詰を一つ差し出してきた。
一体何を確認する前にロニの疲れた様な表情がエミリオとジョブスの目に入る。その意味を察した上で二人はそれを確認した。
「わー……コングマン印のプロテイン缶……」
「何だプロテイン缶って……」
「知りませんよ……」
「アイツいつの間にかこんな物を……」
中身は美味しい鶏ささみだった。