「何だお前、コングマンのファンなのか?」
「そういうわけではないが……何か、凄いと思ってな」
「あー……うん、確かに」
ユダの言葉に同意するロニに、部屋を見渡していたリアラが質問をした。
「ねえ、コングマンって誰?」
「何だリアラ知らないのか? ……って、女の子じゃ仕方ないかもな」
一人納得するロニは、ポスターを見ながら説明をする。
「マイティ・コングマン、ノイシュタットにある闘技場の元チャンピオンだ。18年前の戦いでスタンさん達に協力してな、ノイシュタットではスタンさんより人気があるんじゃないか?」
「え? ……でも、ソーディアンマスターじゃ、ないのよね?」
「ああ、コングマンは飽くまで一市民だ」
リアラが驚いた理由を彼女の言葉で察したのか彼は求める答えを与えた。
「ノイシュタットにとってコングマンはヒーローなんだよ。昔……神の眼を巡る戦いがあった頃だな、貧富の差が酷かったらしくてな、その最前線でコングマンは街を良くしようと活動していたらしいんだ」
「つまり……コングマンは、英雄が誕生する前からヒーローだった……、?」
「だな、遠くの英雄よりも身近なヒーローってわけだ。昔孤児院にきた時に会った事あるが……あれは確かにヒーローの器だな。言動は暑苦しいが、有言実行が出来るデカい男だ」
「ロニがそんなに誉めるんだから、本当に凄い人なのね……」
真剣なリアラの言葉に少し傷付いたロニだが、男は心が広くあらねばと笑って流しつつユダの方を見る。
「お前はコングマンをどう思う? 男だったら憧れても仕方ないけど」
「……そうだな」
てっきり興味無さげに話を流されると思っていたロニは、少し考え込み始めた彼に驚いた。
そもそも、筋肉とは縁遠そうな青年が筋骨粒々のポスターをじっくり見ているその光景自体に何か矛盾すら感じてしまうが。
「魅せる為の筋肉と運動の為の筋肉は別物だからな、それを両立出来てるからこそチャンピオンだったのだろうが……その点は凄いと思う」
「……お前の着眼点は物凄い現実的だな」
「感情論は水掛け論になりやすいからな」
「リアリストだねェ、お前らしいわ」
言われてみればそうだとは敢えて口には出さず少し挑発する様にすれば、それには興味が向けられず無言が返された。