襲撃を難なく対処し、再びパーティは坑道を進む。
血がそうさせるのかカイルは迷惑は掛けない様に壁等を調べていたが、成果は得られないままそれは見えた。
「あ、出口!?」
「ああ、……何故か視界に無いのにロニの表情が分かるな」
「それ大正解ですよ総帥」
答えるジョブスの隣でロニはその表情を見せている。それを冷たい眼で見ているのがユダだった。
「やっぱりいいなァ、お外の光はよ! そう思うだろユダ!」
「僕を巻き込むな」
「またそんなつれない事ー、実はほっとしてるんだろ?」
「お前じゃあるまいし……」
リアラが傍で首を縦に振り全力で同意しているが、気付いている筈のロニは見なかった事にしているのか一向に態度を変えない。構うだけ無駄だと英断を下しエミリオは皆を率い進む。
遂に坑道を抜け自然の光に身を晒すが、眼前に広がるのは当然霧。その上想像していたよりも光は弱く、エミリオは懐中時計と地図で時間を確認する。
「……思ったより時間が掛かったな」
「しゃあないですよ、中真っ暗だったんだし。これからどうします? ノイシュタットまでは未だありますけど」
「なら休んだ方が良いだろう、近くに山小屋があった筈だ」
懐中時計を仕舞ってから若者達を見て先ず目に入ったのは、相変わらず何故か得意そうにしているロニだった。
「まったく、幽霊のゆの字も出なかったじゃねェか」
「それはユダが明かり点けてくれたからじゃない?」
「バカ言うなよ、幽霊なんてこの世にゃ居ないって」
「じゃあロニは居ない物を怖がってたの?」
カイルとリアラの言葉の連係に一度はたじろぐロニだが、今回は持ちこたえてみせる。
「フフン、世の中何が起こるか分からないからな、警戒は必要だろ?」
「死人が甦ったりとか?」
それを言ったのはユダ。皆の注目を浴びる中で彼は不適な笑みを浮かべた。
「冗談だ」
「お前な……笑える冗談にしろよな」
「そいつは悪かったな、如何せん性格が悪いもので」
心の無い謝罪をする視界の隅で少女が息を飲んでいる。その様子はエミリオも確認しており、ユダの言葉も含めそれは見逃せないモノだと今までの経験が語った。
だが今はそれを追及する時ではない、僅かな焦りを抑えて彼は声を掛ける。
「行くぞ、日が落ちる前に山小屋に着いた方が良いだろう」
「山小屋に泊まるの?」
「ああ、ノイシュタットが管理してるから……あ、いや、厳密には違うか……」
溜め息を溢すのを見るにその山小屋には何かがあるのだろう。しかしエミリオはそれを話さず地図を片手に歩き出し、皆はそれに着いていく。
前以て伝えないという事はあまり身構える必要は無い、だが彼には気掛かりになる事。それが気にならない筈が無く、その感情が一番分かりやすく表に出ているカイルにジョブスが言った。
「行きゃ分かるよ、嫌でもね」
「ジョブスさん、何か知ってるの?」
「ああ、思い出しちまったな……うん……気に入るといいな……」
目が遠い、若者達が一抹の不安を感じたのは言うまでも無い。