青春している少年少女と、それを羨む大人達、更にそれを冷たい目で見ている大人達。霧はあれどモンスターの姿は無く、パーティは驚く程に順調に進む。


「無いなー宝物」

「掘られてからそう年月は経っていないみたいだし、何があったとしても掘った人が持っていってしまってるでしょうね」

「うーん……でもさ、不自然に空気が流れてるトコとか、質感の違う壁とかあったらもしかしたらって思うんだよね」

「一応訊いておくが、誰の入れ知恵だ?」


 エミリオの問いに、カイルからは案の定の答えが返ってきた。


「母さん」

「アイツは息子をどうしたいんだ……」

「強欲の魔女二世……」

「止めろ」


 ジョブスの呟きを否定しエミリオは“もしも”を想像し身震いする。

 その時低く不気味な音が聞こえ、見ながら互いの距離を詰め身構えた瞬間正面から暴風は襲いかかった。


「きゃっ」

「えっ、どうしたの!?」


 声を上げたリアラがカイルの声に答えようとした直前、ユダが後ろを向いた。風はまだ続いている、しかし彼は風上に背を向けたまま風を見た。


「アクアスパイク!」


 放たれた螺旋の水流は追い風と共に進み、その途中何かに当たり弾けた。何が起きたと皆が確認する前にエミリオが風上に向かい晶術を発動する。


「デルタレイ!」


 風に逆らう三つの光弾は突如現れた揺らぎを貫き消滅させた。同時に風も止み、坑道に静寂が戻ってくる。


「ふぅ……リアラ、大丈夫?」

「う、うん……何か、冷たい物が一瞬……」


 足に何か触れたのかリアラは足元を気にしている。その謎に答えたのは辺りを警戒しているエミリオだった。


「風に紛れてモンスターが現れたんだ。良い考えだが向こうは霧に紛れる不定形、風が強くて思うように動けなかったみたいだな」

「まさかモンスターに同情する日が来るとは。慣れない事を戦場でする奴は馬鹿って学校で習ったなー」


 沁々と思い出に耽るジョブスだったが、風で乱れた服を直すユダを見てふと呟く。


「でもまあ、総帥はすぐに気付いてましてよね、モンスターが飛ばされて来てたの」

「まあな……一匹目は詠唱が間に合わなくて流してしまった。すまないなリアラ、伝えてもよかったんだがあの風の中で下手に動かれたら」

「い、いえ、あんな風じゃ仕方ないですよ」

「って事はユダファインプレーだな。総帥もそれ見越してたんでしょ?」

「ああ……まあ、な」


 肯定しエミリオはユダを見るが、視線が交わる事は無い。

 嘘は吐いていない、彼ならば何とかすると、自然とそう思っていた。


「ユダすっごいね!」

「これくらい、出来て当然だろう」


 ぶっきらぼうに答える彼の心には今、どんな感情があるのだろうか。


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bkm

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